私選・百合漫画サイテー女ランキング

 トリュフォーヒッチコックとの対談で「あなたの映画の登場人物は全員が罪を背負っているようにみえる」と言った(『定本 映画術』)。また四季映姫・ヤマザナドゥは「生きることはそれだけで罪なことなのです」と言った(『東方花映塚』)。トリュフォーはそれをカトリックの原罪と解したが、あるいは仏教の方が近いかもしれない。ともあれ、こうした冷徹な視点が作家には必要なのかもしれない。
 また、垣根涼介の『ワイルドソウル』に日本にきて日の浅いブラジル移民が「あんたは最低よ!」と罵られて、「最低」という慣用表現を知らないために「そこまで言わなくても」と思う場面があった(小説はべつに面白くない)。
 かくして「最低」にもさまざまな意味合いがあり、このランキングはあくまで私選です。例えば『羣青』の2人はわたしが考えるに悪人ではありません。殺人もウェカピポがウェカピポの妹の夫を鉄球勝負の決闘で殺したようなものです。余談ですが、小谷野敦吉田修一の『悪人』を「最初から答えが分かっている「どちらが悪人か」という問いのために長ったらしく書かれた小説」と言っていました(『芥川賞の偏差値』)。至言ですね。
 それらをご承知の上でランキングをどうぞ。

9位『青い花』千津

 中学生の従姉に手を出しておいて黙って結婚する最低っぷり。文句なしの番付です。伊藤ハチ先生のマンガに出てくるペドフィリアが聖人にみえてきます。カトリックってペドフィリアが多いらしいし。

8位『ロンリーウルフ・ロンリーシープ』藤見理佳

 元カノの友人にアウティングするわやりたい放題。見事な当て馬ぶりです。『東京ラブストーリー』的というか。

7位『私の世界を構成する塵のような何か。』八木明日菜

 『私塵』は他にも欠落をかかえた人物が多いのですが、さすがに見ず知らずの大学生を酔わせて襲って撮影するのはちょっと… ということで番付。ちなみに『philosophia』の知はわたしの基準では悪人ではありません。

6位『少女セクト』大神小百合

 レイプはさすがにちょっと。消化器で殴られるのも当然です。『少女セクト』は他にも強姦まがいのシチュエーションがありますが、それらがBLマンガ的なノリでなし崩しに和姦になるのに対し、最後まで不同意のままです。こんなものモブレですよモブレ。

5位『最低女神』羽南

 好きな相手がイジメられるように仕向けて自分に依存せざるを得ないようにした。まあタイトルに「最低」って入っているし。

4位『Vespa』女王

 ジェノサイドは実施するし男にイザベルを犯させるしの悪辣ぶり。個人的には擁護したいのですが、さすがにジェノサイドの主宰者が悪人でなかったら何が悪かわからないので番付。

3位『魚の見る夢』九条

 友人の願書を出しませんでした。理由は自分を相手の記憶に一生焼きつけるため。たしかに履歴書の学歴欄を書くたびに思いだすだろうが、それでいいのか。お前の存在価値が学歴早見表と同じになるんだぞ。

2位『悪魔のリドル』武智乙哉

 連続殺人犯。犯罪者だったら『ハッピシュガーライフ』だったり殺人犯に限っても『デストロ246』(この番号を『死刑囚042』としょっちゅう混同してしまう)、『イノセントデビル』など他の百合マンガにもいるし、『悪魔のリドル』の登場人物もほぼ殺人犯なのだが、嘘つき、移り気、殺人鬼と三拍子揃っていて普通に人格的に最低。アニメ最終話をみればどんな死刑制度反対派も信念が揺らぐことまちがいなし。

1位『オクターヴ』鴨

 雪乃の郷里で知らないあいだにアウティング。その後、雪乃とは和解していますが「残りの一生、休日にイオンモールにいくことだけを楽しみに過疎地の人口維持に貢献してな、人生に何の価値もない産む機械が!」くらい言ってもよかったと思います。よくないよ。
 「おまえは…… 自分が『悪』だと気づいていない… もっともドス黒い『悪』だ」(©荒木飛呂彦
 百合マンガではありませんが『放浪息子』の城ヶ崎もそうですね。嘘つきで身勝手で挙句にブログで異性装をアウティングする。しかも何の悪意もなしに。キリスト教的な善悪二元論に馴染みのない日本人でも、これが「邪悪(evil)」というものなのだとわかります。
 「お前にカップラーメンを食う資格はない」(©迫稔雄

 他に「最低」だと思うキャラがいればコメント欄にどうぞ。