
snowwhitelilies.hatenablog.com
・総殺害人数(第247話および作者より)
・*終末の日は人類の総人口の残数約56億人。
・【呼称なし】:約20.2億人
・【ビッグガール】:約8.1億人
・【ピンバッジ】:約6.9億人
・【戦争(ヌグベチ)】:約4.8億人
・【おおいなるもの】:約3.2億人(絶対数では約13.3億人)
・【鞄】:約2.7億人
・【イム】:約9000万人
・【真黒石の釣り神】:約500万人
・【マダライツヅ】:約500万人(*ポテンシャルではより多い)
・【出水翠】:約300万人(*ポテンシャルではより多い)
・*人間に準じる怪異は総計4.2億人。
・【益荒鬼】:約200万人
・*【呪物(表記不能)】が異次元で約80億人を殺害していたのは事実らしい。
・【雪の神】:4桁(通史的な総数)
・【しらかみ様】、【福ノ神】:3-4桁
・【エイリアン】:3-4桁
・【マーマン】:約1000人
・【アンドロイド・ルーシー】:3桁
グラフは2次元平面だが、ここに機会(頻度×期間)を乗じれば、危険度×影響範囲×機会で総殺害人数になる。人数は対数化すべきだろう。
福ノ神、天使などは、人間が関与しないときの危険度であることに注意。でなければ、炁神の殺害人数が出水翠を上回ることになる。
・凡例
・"話数"『"話名"』
【"怪異名"】:"怪異の概要"
「危険度:"0-9"」(0=中立 9=関わった人間は確実に死ぬ)
「影響範囲:"1-5"」(1=個体、2=建物、3=土地単位、4=行政単位、5=無制限)
【"裏バイト報酬"】
「裏バイト生還率:"n%"」(ルール解明後)
・第8巻
・第90-91話『雪まつりスタッフ』
【雪の神(名称不明)】:雪像「仮忌体(けいむてい)」を作ると、雪像を作った人間の命を代償に、雪像が模った人間を呪殺「忌成成(いみなりなり)」する。
「危険度:2」
「影響範囲:3」
【日給500,000円*出勤日数1.0日=500,000円】
「裏バイト生還率:50%」
・備考:雪像を作ると幻覚を見て凍死するため、2人以上で参加しなければ確実に死ぬ。一方、雪の神には火という明確な弱点があるため、脱出は容易。
後白村の村民が入村するときに火器を没収するため、隠匿して持ちこまなければならない。
『工場作業員』のヤムちゃん(大家睦実)が再登場。主役2人はヤムちゃんがヤニカスだったおかげで助かった。
後白村は呪殺を請負う、いわゆる因習村… と見せかけて、最後に村民がすべて自覚のない雪の精だったことが明らかになる。いわゆるヒトコワの逆。
岸田元総理(御岸田総理)も雪の精。冒頭の国会議員の暗殺を依頼したらしい。
・第92-94話『特殊清掃員』
【なかたりさん】:死の化身。遭遇すると希死念慮に襲われる。
「危険度:8」
「影響範囲:2」
【1件800,000円*24件/2人=9,600,000円】
「裏バイト生還率:50%」
・備考:映画『回路』と同じ、死そのものの怪異。そのとき、その場でもっとも早い方法で自殺する。作者によれば映画『死の王』のイメージがあるらしい。
具体的には「幸福が死を上回ることはない」という想念が生じるらしい。
『宗教法人スタッフ』の「無に勝るものはない」と並ぶ、作品全体に現れるテーマ。
デイヴィッド・ベネターの反出生主義の前提となる誕生害悪論。誕生害悪論によれば、出生だけでなく生存も害悪になり、死が早いほどより良いことになる。ただし、ベネターはこれをエピクロス主義と称して、自殺に消極的だ。
黒岩案件その1。
『裏バイト』で最高の報酬。出来高払いで死者が蓄積していたため。映画『CURE』よろしく、臨場した地域警察官も自殺していたらしい。
・第9巻
・第96-98話『探偵助手3』
【木谷脳研】:「精神成功体」(無害)「肉体成功体」(「バックルームズ」のモンスターのようなもの)「超常成功体」(五感は退化しているが超能力を使い、知覚した生物を破壊する)「完全成功体」(無害)「元研究員たち」
「危険度:8」
「影響範囲:2」
【日給550,000円:総計】
「裏バイト生還率:25%」
・備考:研究所の見取図が必要なうえ、元研究員たちとの遭遇も避けなければならない。
完全成功体はまったく行動しない。脳科学によれば、理性を向上させるべく情動を絶つと、かえって行動が不合理になったり、行動しなくなったりする(ダマシオ『デカルトの誤り』)。"「うちゅう、せかい、かみ、こうぞう。」"。
・第99-101話『軍手落とし』
【手】:仕事、というより儀式の「軍手落とし」に失敗したり、目的を探ったものを圧潰する。
「危険度:3」
「影響範囲:4」
【1件1,000,000円:総計】
「裏バイト生還率:75%」
・備考:黒岩案件その2。『裏バイト』全体でも唯一の例外の架空の仕事。
仕事そのものの寓喩。仕事を真面目にこなせば生還できる、が、主役2人を残し、20人ほどが全滅。
「どんな仕事にも意味があり、ひとりひとりが自分の仕事をこなさなければ社会が崩壊する」という信仰そのものが具現化した怪異。つまり、いわゆる神の見えざる手。
だが、じつはアダム・スミスは『国富論』で「神の見えざる手」という表現を1回しか使っておらず、むしろ市場原理の説明としては誤っている。同様の誤解として、ダーウィンが『種の起源』で「進化」という表現を1回しか使っておらず、進化論の説明としてはむしろ誤っていることがある。「神の見えざる手」という表現は、生物の複雑さに対する創造説のようなものだ。
「どんな仕事にも意味がある」という民間信仰は、「都会の学者が村の因習を迷信だと言って破壊するが、じつは意味があった」という民俗ホラーの現代版だ。
世論調査会社YouGovによれば、イギリス国民の37%が「自分の仕事には意味がない」と回答。また、同じくスコーテン・アンド・ネリセンによれば、オランダ国民の40%が同回答。
人類学者のデヴィッド・グレーバーは『ブルシット・ジョブ』で「ブルシット・ジョブ(意味のない仕事)」を5種類に分類。1. お飾り:秘書や受付など。2. 利権屋:ロビイストや企業弁護士など。価値創造ではなく、その分配に関わる。3. 苦情対応 4. 書類作成 5. 事務屋 。
だが、このすべてに共通することがあり、それはその仕事に意味があると思わせることだ。すなわち、その仕事に意味があるか考えてはならないとする。
そのため、軍手落としの怪異はその仕事の理由を探る、あるいは考えるものを圧殺する。
・第102-104話『コンビニ店員』
【とことこちゃん】:コンビニの常連客だった幼女の霊。
「危険度:0」
「影響範囲:2」
【時給69,990円*出勤時間8時間*出勤日数31.0日=17,357,520円】
「裏バイト生還率:100%」
・備考:いわゆる泣けるホラーの回。『裏バイト』でほぼ例外のほぼ無害の怪異。逆に、全話通して泣けるホラーの回が今回だけなのか…
・第105-107話『図書館スタッフ』
【ムダイ】:裏世界の図書館にある、あらゆる情報の記載された本。帯出を阻む。
「危険度:1」
「影響範囲:2」
【時給9,000円*出勤時間8時間*出勤日数13.0日=936,000円】
「裏バイト生還率:90%」
・備考:積極的に人間に危害を加える怪異ではない。
帯出を阻む方法は、大量の情報を流しこんで廃人にするというもの。
ボルヘスの『バベルの図書館』(所収『伝奇集』)と『砂の本』のようなもの。あまりに多くのことを知ると廃人になるということも、同じく『記憶の人、フネス』(所収『伝奇集』)に書かれている。
図書館司書の花巻は、表世界でムダイを読むことに成功するが、自分の未来を知って自殺… しようとするも、そのたびに未遂に終わる。
裏バイトを発注していたのも花巻らしい。地方公務員の給料でよくやる。
・第10巻
・第108-110話『美術館スタッフ』
【たつ子】:上坂象太郎の美術品群。目を離すと襲いかかってくる。また、見たものの視界に複写される。
「危険度:5」
「影響範囲:2」
【たつ子(伝染について)】
「危険度:1」
「影響範囲:5」
【日給99,000円*出勤日数10.0日=990,000円】
「裏バイト生還率:75%」
・備考:ヤムちゃんが準レギュラー化。
目を離しているあいだに少しずつ動き、ついに襲いかかってくるシンプルな怪異。そのため、ヤムちゃんの視点で原点回帰。
恐怖心によってショック死させるため、目を離しても、翌日の日中まで寝落ちしていれば逆に無事らしい。
しかも、そのまま図像は美術品から脱走する。また、関心をもって見たものの視界に複写される。美術館に来館したホラーマニアたちは全滅。
美術品のモデルはおそらく岸田劉生の『麗子像』。視界の汚染の元ネタはショートフィルムの『消えない』か。
・第111-113話『墓参り代行サービス』
【高井津村村民】:無人村・藤吉村の「高井津」の墓石に墓参したものを消す。
「危険度:4」
「影響範囲:3」
【日給100,000円*出勤日数2.0日=200,000円】
「裏バイト生還率:50%」
・備考:黒岩案件その3。
『裏バイト』で唯一の例外で、直接的な民俗ホラーの回。被差別部落の高井津村の祟り… と見せかけて、被差別部落は藤吉村のほう。恥と罪悪感は人心を操る典型的な方法だ。
差別心が霊威になっているため、藤吉村の子孫だと「誤解」されなければ危険ではない。
・第114話『動画配信ゲスト』
【しーマン】:裏バイトを人口に膾炙しようとしたものを消す。名称は作者より。
「危険度:-(1)」
「影響範囲:-(5)」
【視聴者たち】:野次馬の怪異。
「危険度:-(4)」
「影響範囲:-(1)」
【-】
「裏バイト生還率:-」
・備考:1話完結の良回。定点観測の特別演出の回。
裏バイト… ではなく、裏バイトに関連した普通のバイト。反故になったが、もしあっても報酬は些少な謝礼だけだっただろう。
"人生乙"。
・第115-116『研究助手』
【荒木源一郎】:人格を転写して1000年以上延命してきた科学者。
「危険度:7」
「影響範囲:2」
【研究協力費3,000,000円】
「裏バイト生還率:25%」
・備考:過去の犠牲者の研究助手が、脱出ゲームよろしく手がかりを残している。だが、荒木がさすがに天才科学者だけあり、裏をかこうとしても裏の裏をかかれて終わったと思われる。その意味で橙だけしか脱出できないだろう。サトリの怪物を倒す方法みたいなもの。
・第117-119『スーパーマーケット店員』
【スーパーマーケットの怪人】:日常に終わりがないということを理解したものを仲間にする。
「危険度:3」
「影響範囲:2」
【スーパーマーケット(怪異ではない)】
「危険度:3」
「影響範囲:5」
【時給10,000円*出勤時間4.0時間*出勤日数31.0日=1,240,000円】
「裏バイト生還率:50%」
・備考:『裏バイト 逃亡禁止』のタイトルに反して、主役2人が自主退職した唯一の回。
ゲストキャラクターも唯一の例外で名前に色が入っている。
ただし、逃亡したのは怪異であるスーパーマーケットの怪人からでなく、スーパーマーケットから。
じつはスーパーマーケットの怪人に害意はない。終わらない日常から人々を解放しようとして、猟奇殺人などの怪事件を起こす。だが猟奇殺人ですら、警察が日常業務として処理してしまう。日常に終わりがないということを理解したものは、スーパーマーケットの怪人に惨殺されるか、自身もスーパーマーケットの怪人になる。
スーパーマーケットはスーパーマーケット。裏バイトをしているあいだは自身が非日常にいると思えるだろうが、逆に、裏バイトをするようなひとほど日常に絶望しやすいだろう。白浜のほうは何の危険も感じなかったらしい。その意味で『治験』と対になっている。
"「白田君ダメエエェェェ!!」「どうしてええぇ!? 白田君」「日常は檻なんかじゃないでしょ。檻なんかじゃない。」"。"「日常を檻と感じるのは、あれのせいだわ。抽象的な話じゃない。」「確かに存在してる。たった今、目にしたあれは。」「そう、「あれ」…」「「あれ」に皆、」「スーパーマーケットに、支配されている。」"。
哲学の思弁的実在論の論者が言うところの唯物論的ホラー。ホラー作家、SF作家であるチャイナ・ミエヴィルによると、ラヴクラフトが転機だったらしい。ラヴクラフト以降、怪奇小説は怪奇幻想から、現実が怪奇だということを主題にするようになった(小論「M. R. James and the Quantum Vampire」(所収『Collapse』第4号))。とくに現代の作家ではトマス・リゴッティ(『悪夢工場』)がいる。
・第11巻
・第120-22話『公園管理員』
【南光公園】:公園の狭間の空間。
「危険度:3」
「影響範囲:3」
【時給6,000円*出勤時間8.0時間*出勤日数3.0日=144,000円】
「裏バイト生還率:70%」
・備考:夕暮れの光景で、ノスタルジーによって人々を誘う。ゲーム『トワイライトシンドローム』の「裏側の街」のようなもの。だが、その正体は巨大な蚊の怪異の巣。ノスタルジーも怪異の出すフェロモンによるもの。そもそも、ノスタルジーの対象は実在しない。
・第123-125話『仲買人』
【マーマン】:半魚人。同類の臭跡で人間を襲う。名称は作者より。
「危険度:2」
「影響範囲:4」
【日給100,000円*出勤日数2.0日+落札ボーナス60,000円=260,000円】
「裏バイト生還率:80%」
・備考:いわゆる半魚人。人間が食用に漁獲するため復讐している。知能は低く、臭いを消せば、他の人間と識別できなくなる。だが、いずれ上陸して人間という種族そのものに復讐する。
"「なんで、」「ここにいる人達と、私達、何が違うの。」「落とせるだけ、落とすわ。お金を手に入れるの。」"。
インバウンド需要で築地市場が観光資源化を進めているが、魚と獣の違いがあるだけで、屠畜場を開放していることと変わらない。市場化するにも限度があるはずだ。
・第126-128話『テーラー(販売スタッフ)』
【-】:-
「危険度:-」
「影響範囲:-」
【時給10,000円*出勤時間6.0時間*出勤日数4.0日=240,000円+スーツ一式(現物支給)】
「裏バイト生還率:100%」
・備考:今回、裏バイトはあくまで傍観者。ただ、下手すれば警備の金銀兄弟に半殺しにされていた。人皮を消費する社交界の麗賓倶楽部を舞台にした惨劇。一応、肉皮剥離薬という超常的なものが登場する。平山夢明のドキュメンタリーの『異常快楽殺人』によると、顔は鼻翼など屈曲があり、瞼が薄いため、破かずに皮を剥がすことは難しいらしい。
・第129-131話「ホテル従業員」
【オサダ】:ホテルの309号室。入室したものを自殺させる。
「危険度:8」
「影響範囲:2」
【時給8,000円*出勤時間6.0時間*出勤日数3.0日=144,000円】
「裏バイト生還率:25%」
・備考:ホテルものだけあり致死率が高い。309号室に泊まると死ぬどころか、3階に立ちいったものを催眠で入室させる。そのため、3階そのものが封鎖されている。スティーヴン・キングの『1408号室』をより凶悪にしたもの。
『裏バイト』で唯一の例外である、雇用主が人命優先で自主廃業した例。霊はカス。
・第12巻
・第132-134話『引っ越しスタッフ』
【手長足長様】:呪ったものに永久にとり憑く。名称は作者より。
「危険度:6」
「影響範囲:1」
【日給100,000円*出勤日数1.0日=100,000円(白浜は2万円減給)】
「裏バイト生還率:70%」
・備考:追ってくる怪異。自動車では追いつかれる。顔を見ると死ぬまで呪われる。ただし、顔を見せるときに首を回転させる間があり、また、目を瞑るだけでいい。
・第135話『カフェ店員』
【-】
「危険度:-」
「影響範囲:-」
【時給9,800円*出勤時間6.0時間*出勤日数1.0日=58,800円】
「裏バイト生還率:100%」
・備考:コラボ回でギャグ回。
時給は桁の発注ミス。流れで悪魔召喚されているが、普通に警察に連行されている。
・第136-139話『花火大会準備スタッフ』
【益荒鬼】:空中に浮遊する巨大な頭部。見たものの頭部を破裂させる。
「危険度:9」
「影響範囲:3→4」
【日給100,000円*出勤日数2.0日=200,000円】
「裏バイト生還率:70%」
・備考:花火大会の観客が全滅する大災害に。作中でもしらかみ様(『自然保護監視員』)に言及しているが、伝承で疫病と伝えられているだけあり、移動性なのがより悪質。伊藤潤二の『首吊り気球』に「見るなの禁忌」が合体したようなもの。
人身御供の霊が怨霊と化すという定番の裏をかいて、本当に守護霊になっている。
"「でもねハマちゃん、私 今、思った。これからも私 きっと大勢の人を助けられないけど、」「ハマちゃんの事は、絶対死なせないから。」"
・第139-140話『百葉箱記録員』
【百葉箱】:付近の時空間が乱れる。
「危険度:0」
「影響範囲:3」
【日給200,000円*出勤日数1.0日=200,000円+交通費20,000円(別途支給)(各々、北海道と佐賀県から復路のみ)】
「裏バイト生還率:100%」
・備考:3つの百葉箱。異なる時間と空間を観測するためのもの。藍川の予想によれば、元々は異時間の観測用と、異空間の観測用の横並びの2つだけだった。この2つは出力器。そこに異空間への入力器となる、手前の1つを新設した。
つまり、異空間に逃亡するような未来を百葉箱で見た。が、その百葉箱の中は暗黒。黒嶺はその中の自分に「許さない」と言われる。
入力器は失敗作。百葉箱の中にあった集合写真と思われたものは、転送に失敗した空間そのものだった。
百葉箱の影響で付近の時空間も乱れている。が、危険はない。
・第141-143話『樹海捜索員』
【樹海生命】:遭難者を捜索するものを首吊り自殺させる。また、遭難者に擬態して、人間社会に播種する。
「危険度:9」
「影響範囲:3→5」
【日当800,000円(全額)】
「裏バイト生還率:10%」
・備考:黒岩案件その4。
主役2人が逃れられなかった怪異の1つ。白浜と黒嶺は首吊り心中しかけるも、互いの死を拒絶して、数瞬の差で助かる。
熟練の裏バイター2人も死亡。
結末は映画『エイリアン』。怪異の造形もフェイスハガーとチェストバスターを想起させる。
首吊り死体の縄や、大樹の蔓に見えるものは怪異の臍帯。首吊り自殺したものは養分になるらしい。
樹海の中心には民家の幻影があり、遭難者はその中にいる。遭難者は怪異を懐胎する。半透明の皮膜で内部の胎児が見える。
だが、誕生する嬰児は遭難者自身。その個人になり代わり、人間社会に浸透する。胎児の造形は映画『 ボディ・スナッチャー』。結末も、将来的には『 ボディ・スナッチャー』のそれになることを示唆している。
胎児の誕生後には、首吊り自殺させられたものは、蓑虫のような怪異に変態する。
じつは樹海全体が羊膜で覆われている。また、捜索隊の派遣そのものが怪異の催眠だったと思しい。
黒嶺の嗅覚が働かなかったのは、エヴァルス(『農業手伝い』)と同じく、生態系そのものだったからだろう。
・第13巻
・第144-146話『おもちゃ屋スタッフ』
【スマイリー・ガウチョくん】:着ぐるみ大の人形。笑顔以外の表情を見せると、食べられてぬいぐるみに変えられる。(*社会現象になった同名のおもちゃ。持つものを強制的に笑顔にする)
「危険度:5(*1)」
「影響範囲:2(*5)」
【時給10,000円*出勤時間6.0時間*出勤日数22.0日=1,320,000円(数日間の夜間警備は給料不払い)】
「裏バイト生還率:90%」
・備考:ゲーム『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』や、そのパロディの映画『ウィリーズ・ワンダーランド』のような、着ぐるみ恐怖症を思わせる怪異。笑顔でいるものには危害を加えられないらしい。
・「おもちゃの長嶋屋」の亡霊…スマイリー・ガウチョくんを使役しているつもりの傀儡。低級霊。
・というわけで、スマイリー・ガウチョくんの正体は人を強制的に笑顔にする怪異。撃退しても、また別のマスコットに変異する。ニコラス・ケイジに倒されたりはしない。
笑顔の強制という恐怖には映画『スマイル』がある。
・第147-149話『天体観測』
【スター・マン】:宇宙の外側を知ろうとするものに知識を授ける。知識を得たものはアセンションする。また、深く関わると発狂する。
「危険度:2」
「影響範囲:5」
【日給210,000円*出勤日数5.0日=1,050,000円】
「裏バイト生還率:100%」
・備考:
・宇宙ジャンボ餃子論…光速度不変と対称性の2つの前提から、特殊相対性理論が導かれる。極限を定め、可微分多様体を仮定すれば、さらに一般相対性理論が導かれる。一般相対性理論からブラックホールの存在が導かれ、ここから宇宙の創成についてのインフレーション理論や無境界仮説が導かれる。つまり、科学を観測と数学による定式化の営みとするなら、人間の知識は光速の範囲を超えない。しかも、そうして得られた宇宙の描像は、つねに決定論的だ。だが、そうした科学の営みこそが人間の自由と尊厳なのだ。
宇宙ジャンボ餃子論は、おおむね『ホーキング、宇宙を語る』やワインバーグの『宇宙創成はじめの3分間』などの宇宙論の一般書の内容そのもの。
逆に、科学で得られる以上の知識を得れば、人間以上の存在にアセンションすることになる。換言すれば、人間でなくなる。
スター・マンが接触してくるときに、副次的に、人間でも理解可能な知識を受信する。宇宙ジャンボ餃子論もその一端らしい。
外宇宙の概念と、人間が最後まで科学的な態度を取りつづけることはラヴクラフト的。
レッシングの言葉を引用すれば「あらゆる真理の知識か、生涯の真理の探求なら、後者を選ぶ」(本当はコメディドラマの『ヤング・シェルドン』からの孫引き)。
・第150話『売り子』
【即売会】:異形たちの即売会。
「危険度:5」
「影響範囲:2」
【日給350,000円(全額)】
「裏バイト生還率:80%」
・備考:人間だと気づかれないため、覆面を外してはいけない。橙は覆面を外すが、はじめて柱の男と対峙したときのジョセフ・ジョースターのような姿勢だったため無事生還。ジョースター家のような黄金の精神を持っていなくても、覆面を外さなければいい。
・第151-152話『薬局スタッフ』
【大縄薬局の幽霊】:幽霊。ただ居ることしかできない。ただし、意識のない人間に憑依できる。
「危険度:1」
「影響範囲:1」
【時給8,000円*出勤時間6.0時間*出勤日数27.0日=1,296,000円】
「裏バイト生還率:30%」
・備考:珍しく自主退職している。しかも無断。給与も当月払いでなければ取り損ねるところだった。ただし、逃げたのは人間から。幽霊は何もできない。
・第153-155話『警備保障会社スタッフ』
【大倉さん】:人間の恐怖に反応し、その人間を自殺させる。
「危険度:6」
「影響範囲:2→5」
【時給7,000円*出勤時間12.0時間*出勤日数30.0日=2,520,000円】
「裏バイト生還率:10%」
・備考:ついにきた事故物件もので、2度のツイストがある。主役2人が逃れられなかった怪異の1つ。
アパートの住人を自殺に追いこむ。しかも、周期的に暴走する。
じつはアパートは盗撮カメラが仕込まれ、会員制のリアリティショーにされていた。作中で1ヶ月が経過していることと、3交代制勤務で出勤日数が30日であること、入居者の募集の期間を考えると、暴走の周期は3ヶ月ほどか。
大倉さんから逃れる方法はないが、恐怖心を持たないものには反応しない。
暴力で対抗できるように見えるが、実際には「暴力で対抗できる」と思っていることで、恐怖心が弱まり対抗できている。意識的に恐怖心を弱めることはできないため、本質的には対抗できない。
・第14巻
・第156-158話『探偵助手4』
【地獄の入口】:廃ビルに開いたまま放置されている。幻覚で人々を誘いこむ。
「危険度:3」
「影響範囲:2」
【日給550,000円*出勤日数1.0日=550,000円】
「裏バイト生還率:75%」
・備考:今回は『ヘルレイザー』シリーズなどの、シュルレアリスム絵画風の地獄。
・「探偵助手」の勤務内容はほぼ便利屋のこともあるが、今回は浮気調査。
・第159-160話『遺品整理』
【呪具】:リスのマスコット。近づくと死ぬ。しかも追いかけてくる。
「危険度:8」
「影響範囲:1」
【日給300,000円*出勤日数1.0日=300,000円】
「裏バイト生還率:50%」
・備考:呪具コレクターである赤川・八木姉弟の父親が所持していたもの。父親は畜牛の体内から発見される。走って追いかけてきて、そのまま逃げたと思われる。そのため詳細不明。
・八木探偵の来歴…有栖川有栖の『月光ゲーム』から引用すれば「ミステリの本質は幻想小説。その源は謎への郷愁だよ、アリス君」。八木探偵は在学中に競馬に溺れ、闇金に手を出したことも同じ理由で説明しているが。
・第161-163話『花屋スタッフ』
【ドリーミン・フラワー】:願いをもつものを取りこみ、夢を見せる。
「危険度:4」
「影響範囲:1」
【日給300,000円*出勤日数2.0日=600,000円】*
「裏バイト生還率:100%」
(*勤務地が「○○県 フラワーガーデンSAGA近辺」となっているため、おそらく勤務内容は探偵助手)
・備考:集合恐怖症と昆虫恐怖症の表現があるが、すべて花屋店主の佐賀の夢。
本人の命を代償に夢を見せるが、第三者に影響はない。
物語は古典の映画『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』の裏読みになっている。
・第164-167話『探偵助手5』
【気体】:治安の悪さで有名な東弥地区に充満する気体。
「危険度:3」
「影響範囲:4」
【成功報酬5,000,000円(全額)】
「裏バイト生還率:10%」
・備考:主役2人が逃れられなかった怪異の1つ。殺されることはないが、永遠に東弥地区で路上生活を強いられていた。金銀兄弟の協力により脱出。といっても、脅威は怪異というより人間。『裏バイト』で唯一、平山夢明や福澤徹三の実話怪談風の話。
貧困地域が形成されるもっとも一般的な理由は自己成就的予言。19世紀ロンドンで疫病が流行した理由は公衆衛生の問題だったが、瘴気説が唱えられていた。そして、瘴気説が通説であるあいだは公衆衛生の問題は解決しなかった。東弥地区の気体はその瘴気が現実になったようなもの。つまり、犯罪と貧困に対する「あそこは○○地区だから」という同語反復的な言説が気体の正体。正体を探ろうとすると、最後には見返してくるのはそのため。
・「探偵助手」の勤務内容はほぼ便利屋のこともあるが、今回はペット探し(という名目の人探し)。
・第15巻
・第169-171話『コンサートスタッフ』
【希美】:バンド「The KINGDOM」にとり憑いたグルーピーの女性の怨霊。
「危険度:4」
「影響範囲:1」
【日給350,000円*出勤日数1.0日=350,000円】
「裏バイト生還率:90%」
・備考:「The KINGDOM」は解呪の儀式としてライブを決行。見ると累が及ぶため、規制線を張るコンサートスタッフは背後をふり返ることができない。
・第172-174話『船舶乗務員』
【神の子】:到達不能極のような地点に建つ十字架。目にしたものは罪の意識に目覚める。
「危険度:0」
「影響範囲:5」
【-】*
「裏バイト生還率:100%」
(*黒嶺不参加のため収支不明。勤務期間は14日間前後)
・備考:黒岩案件その5。
哲学者のミシェル・フーコーは『知への意志』で、キリスト教の告解は罪を宥恕するのではなく、ありもしない罪を捏造するものだと喝破。船長の胸糞を見れば、そのことはよく分かるだろう。
戦争、環境破壊、その他の悪徳は人間が自身の責任で行っていることで、罪や善悪のような宗教的な観念を持ちだすことは思考停止だ。
黒嶺が登場しない番外編。
メタ読みすれば、黒嶺が登場しないのは危険な怪異ではないから。
・第175-177話『昆虫研究助手』
【ヌグベチ】:超知性をもつ昆虫。
「危険度:7」
「影響範囲:5」
【日給100,000円*出勤日数11.0日=1,100,000円】
「裏バイト生還率:50%」
・備考:ついにきたナチュラルホラーの昆虫もの… で、脅威が知性だというツイストがされている。昆虫も襲ってくるが、ヌグベチが凶暴化させたもの。
外見は第247話で初登場。
・第178-180話『新公団住宅管理員』
【団地の幽霊】:公団の住人と入れ替わる。
「危険度:8」
「影響範囲:3」
【日給100,000円*出勤日数7.0日=700,000円】
「裏バイト生還率:100%」
・備考:神回。
映画監督の黒沢清は『岸辺の旅』で「本物の幽霊は幽霊だと識別することができない」という哲学を表した。
集合住宅と替え玉というテーマは宮部みゆきの『理由』以来のもの。
というわけで、公的に賃貸・分譲契約を締結した入居者だけに関わるため、部外者には関係しない。
・第16巻
・第181-183話『カラオケ店員』
【だんご】:カラオケ店の17-20時に出没し、客や店員をとり込む。とり込まれたものは存在自体が消失する。
「危険度:5」
「影響範囲:2」
【時給30,000円*出勤時間3.0時間*出勤日数1.0日=90,000円】
「裏バイト生還率:50%」
・備考:籠城して魔の時間が過ぎるのを待てば、凌ぐことができる。なお、とり込まれたものは歴史と記憶から消失するため、怪異そのものは別として、怪異の被害は記憶されない。
・忘れること…石岡学の『みんなの〈青春〉』によれば、いわゆるキラキラ青春映画は「青春は忘れられる」ということまで含めて定型らしい。
・第184-186話『参拝案内』
【太空神社の祭神】:あらゆる呪詛を御祓いできる。
「危険度:0」
「影響範囲:2」
【池内康太の幽霊】
「危険度:2」
「影響範囲:1」
【日給1,000,000円(全額)】
「裏バイト生還率:100%」
・備考:モデルは東峰神社。参拝すればあらゆる呪詛を御祓いできる。だが、救済に値しない参拝者は参拝を始めたときに戻される。しかも、そのたびに参道の距離が伸びる。
黒嶺の反応からして、太空神社の祭神、炁神、おおいなるものの3柱の神格は作中でも最上位の存在らしい。
参道を来る神子らしい存在や、祭神そのものを見ると神罰を下すが、善神。
御祓いの依頼者は犯罪者であることが多いため、神社が警察と情報共有しているという設定が面白い。
児童誘拐殺人犯の保科周一は、被害者の池内康太に呪われる… が、とことこちゃん(『コンビニ店員』)などの例を見るに、御祓いしなければ、霊障は常識の範疇だったと思われる。
呪詛や怨恨を消すと、かえって状況が悪化するということは、のちのセレモニースタッフの話でも。
・第187-189話『家庭教師』
【母慈臓】:地蔵。子を蘇生させる。母の命を代償にする。母慈臓の下でひと晩を過ごした女性は母代わりになる。
「危険度:2」
「影響範囲:1」
【塙家父】:小人のオッサン。
「危険度:2」
「影響範囲:1」
【塙家母】:巨人のオバサン。
「危険度:7」
「影響範囲:1」
【日給150,000円(全額)】
「裏バイト生還率:30%」
・備考:ギャグ回。
母慈臓は母代わりを交代していくことができ、危険は小さい。
塙家父はホラーの子供ものの定番。ただの小人のオッサンだから、正体が分かれば脅威ではない。
塙家母が現れた家はバーバヤーガの小屋さながら。そんなものが日本の住宅地にあるなよ。
・第190-192話『宅配サービス』*
【家】:家。人間に住もうとする。
「危険度:7」
「影響範囲:2」
【家守台】:時空間の混乱した住宅地。
「危険度:7」
「影響範囲:3」
(第198-199話『宅配サービス2』に後日談)
【日給120,000円*出勤日数7.0日=840,000円】*
「裏バイト生還率:10%」
(第202話より。『宅配サービス』は恒例の(裏)帳簿はなし)
・備考:ついに訪れたバッドエンドの回。
より危険なのは家守台のほう。空間の迷宮化、時間のループ、幻覚と、異界のハイエンドになっている。異界化は家が動くことで物理的な矛盾が生じているため。最深部は家すら近づかない。帰る場所をもたないものは脱出不能。そのため、白浜は行方不明に。
家に住まれたものは亡霊のような存在になる。そうでなくとも、家が動きまわるだけで危険。
矢玉四郎の黒い児童文学の『ねこの手もかりんとひとつ』の「家が家出する」を思いだす。
・第17巻
・第193-197, 200-202話『宗教法人スタッフ』
【炁神】:万能の神。
「危険度:0」
「影響範囲:5」
【出水翠】:炁神が降りた人間。
「危険度:8」
「影響範囲:4」
【日給200,000円*出勤日数4.0日=800,000円】
「裏バイト生還率:10%」
・備考:最終章を除けば『裏バイト』で最大の長編。
黒嶺も白浜父の協力と偶然がなければ脱出できなかった。
カルトについて明確にしておこう。
リフトンの『思想改造の心理』がカルトを定義している。1. 指導者の神格化 2. 洗脳 3. 上位からの操作と搾取を伴う自発的な階層構造 の3条件だ。
洗脳は8基準で定義している。1. 環境コントロール:情報の遮断。 2. 神秘的な人間操作:神秘的な理想主義。 3. 純粋性の要求:罪悪感と羞恥心による純潔主義。 4. 自白の信仰:4-1. 浄化・内面を空にする 4-2. 自己放棄・環境との同化 4-3. 罪悪感と羞恥心による全面的暴露の欲求(カミュの『転落』が描くとおり、自白者は本当は自白せず、罪、恥、その他、貴重なものである秘密を抱える) 5. 神聖な科学:科学の代替物。 6. 特殊用語の言語:自己完結的なクリシェ。複雑な諸問題をきわめて短い言葉に還元する。 7. 教義の優先:生活より優先。 8. 存在の権利の分配:存在の可否を決定。
注意すべきは3番目の条件だ。つまり、ただの宗教団体や霊感商法の集会はカルトではない。白明炁神論はしっかりカルト。
規模の大きいカルトは設立当初からビジネスマンが関わっているということも、実例のとおり。
白明光子が戯れに神の権能を見せたおかげで、白浜は帰還。
だが、最終的に出水翠が依代に選ばれる。炁神は依代を選ぶだけで、直接的に干渉することはない。
かくして白明炁神論教は無を信仰する本物の宗教団体になる。
つねに無は有に勝るということは、分析哲学が証明した真理(デイヴィッド・ベネター『生まれてこないほうが良かった:存在してしまうことの害悪(Better Never to Have Been: The Harm of Coming into Existence)』)。なぜ、つねに恐怖と不安が存在する世界で生きるのかということは、『裏バイト』全体のテーマ。
・第18巻
・第204-206話『オークション会場スタッフ』
【呪物の群れ】:呪具、に見えてじつは自らが意思をもつ。
「危険度:8」
「影響範囲:2」
【日給500,000円(全額)】
「裏バイト生還率:100%」
・備考:平山夢明の『メルキオールの惨劇』の事故物品を思わせる呪物の群れ。
オークションそのものが、出品物が入札参加者を落札する怪異と化している。
明らかにカタログに掲載されていない、先史文明の人類約80億人を絶滅させた呪物「(表記不能)」まで出現する。
入札参加者は呪物コレクターではなく、呪具として使用するためオークションに来場している。
呪物に落札されなかった入札参加者は全員死ぬ。黒嶺は危険を察知するも、洗脳される。競売人はオークションのために生かされる。
・第207-209話『アドマン』
【黒陽様】:東京の土地神。生贄を代償に東京を繁栄させる。
「危険度:7」
「影響範囲:4」
【日給750,000円(全額)】
「裏バイト生還率:75%」
・備考:山手線沿線で「捧」の字をかたどり、その付近の人間を供犠に捧げる儀式。供犠は黒陽様の図像を見たものから選ばれる。
Qが広告という手法を案出。不特定多数から無作為抽出した個人に影響を与えるという、広告そのものを具現したような儀式になる。
黒東京会という秘密結社が主宰。東京を目的にしているあたり、土地開発の関係らしい。
儀式の実行者も供犠になりうるが、黒陽様は天から地上を見ているらしく、地下にいれば無事。
・第210-212話『テスター』
【うらうらちゃん】:裏バイト用アプリのβ版。
「危険度:3」
「影響範囲:1」
【日給250,000円(全額)】
「裏バイト生還率:80%」
・備考:怪異を「封印(フリージング)」するという仕様で開発されたが、バグで使用者をデータ化する。
『ラーメン赤猫』と一方的にコラボ。
・第213-215話『コンパニオン』
【天使】:葡萄踏みをした若い女とその果汁を供物に、文字どおり死ぬほどの快楽を与える。
「危険度:2」
「影響範囲:1」
【日給900,000円(全額)】
「裏バイト生還率:50%」
・備考:ルネサンス絵画の美神のような怪異。1. 生贄となる若い女を告げる 2. その女が葡萄踏みをする 3. 1の女と面会し、捕食する 3'. ただし、2の前に1の女と面会した場合、その女は溶解する という複雑なプロトコルがあり、ほぼ人間とは中立。
1の女の人数に相当する参加者の人数に快楽を与える。が、3で人数に不足があった場合、参加者全員に死ぬ以上の苦痛を与える。というか死ぬ。
いかにもな秘密クラブが主宰。快楽を得るための猟奇的なことはやり尽くしたらしい。
・マッズ!…『寿エンパイア』の寿司職人、児島渡の啖呵。なお、啖呵として言うだけで、見るからに不味いものは黙々と食べる。児島の活躍をまとめた番外編『寿司職人『児島渡』』は好評発売中。この単行本、塩が効きすぎだ!
・第19巻
・第216-218話『新聞配達』
【座敷童】:禍福を司る。
「危険度:2」
「影響範囲:3」
【日給100,000円*2.0日=200,000円】
「裏バイト生還率:80%」
・備考:最後の橙回。崎村、ヤムちゃんも登場。
禍福を司る地蔵の福の部分だけを封印すれば、禍福は均衡を保つため、地蔵がもたらした禍の分の福を横奪できるという設定が面白い。
・第219-221話『解体作業員』
【墳墓】:「黒岩」を安置した建物。順路を誤ると死ぬ。
「危険度:8」
「影響範囲:2」
【日給1,000,000円(全額)】
「裏バイト生還率:10%」
・備考:最後の黒岩案件。
「バックルームズ」のような内壁で区画化された建物。じつは迷路で、順路を誤ったものを箱にする。
映画『CUBE』の「終わりのない忘れられた公共事業だ("This is an accident, a forgotten, perpetual public works project.")」というセリフそのもの。
現場にいる建設作業員たちは、公共事業を受注しただけの、普通のゼネコンや下請けの社員らしい。普通の建設作業員たちだけに、白浜と黒嶺を拍手で迎える場面が不気味なのだが。
ただ、『CUBE』と異なり、盗掘を防止する迷宮という意味がある。
・黒岩…日本を鎮護する人柱の家系。死体が箱になって厄災を封じこめる。それが黒岩。
・黒岩さん…ただの良い人。
・第222-225話『デパートスタッフ』
【エイリアン】:人間を食品にしている。
「危険度:8」
「影響範囲:2」
【日給50,000円*出勤日数13.0日=650,000円】
「裏バイト生還率:10%」
・備考:最後の裏バイト。それだけにかなり怖い。生還率はすでに何度も下限に達しているが、最後にしてコストパフォーマンスで下限を更新してきた。
買い物客をダンボール箱の中で縮小して閉じこめ、そのまま運びださせる。しかも、最終日には店員も全員捕らえる。白浜と黒嶺が助かったのも幸運による。
「消費せよ」の元ネタは映画『ゼイリブ』。だが、宣伝するのが人間でなくエイリアンのほうだというツイストがある。
最終日にデパートの入口から逃げると、70年代のSF映画・ドラマ風の視覚効果のもと、エイリアンの世界である異次元に転送される。エイリアンも70年代の特殊メイク風。
映画監督の白石晃士曰く、本物の地獄はチープなCGのようなもののはず。
・第228-230話『フィクサー』*
【さる】:猿人。山に棲息。
「危険度:7」
「影響範囲:3」
*「メッセンジャー」
・備考:山中に写真を貼ると、その人物を供物だと思って攫う。
・第234-236話『フィクサー2』*
【蜘蛛】:巨大蜘蛛。奇病を流行させる。
「危険度:8」
「影響範囲:4」
*「下水道調査員」
・備考:孵化すれば覚醒黒嶺でも手に負えないが、孵卵中は無防備ということで倒される。
・第240-243話『フィクサー3』*
【記乃霊園】:死者と会うことができる。または、死者を殺すことが。
「危険度:1」
「影響範囲:2」
*「墓地管理」
・備考:白の扉から入る霊園では死者と会うことができる。赤の扉から入る霊園では死者を殺すことができる。殺された死者は歴史と記憶から消滅する。だが、弔問客だけのこと。
セレモニースタッフの仕事は錯乱した弔問客を制止すること。
じつのところ、死者は生者と一体化していて、その存在を消すと欠損が生じる。
・第237-239話『私的用件2』*
【呪いのビデオ】:呪いのビデオ。
「危険度:5」
「影響範囲:1」
*「ダビング」
【1件20,000円*10件=200,000円】
・備考:高校時代の赤川と藍川がした裏バイト。呪いのビデオを見ながらダビングする。依頼は10本だったにもかかわらず、赤川が売却目的で11本目をダビング、今まで蔵匿してきたことで黒嶺弥生を倒す最終兵器になる。
最初におぼえた呪文でラスボスを倒す展開みたいでアツい。
映画『リング』に対する、最後の1人が呪いのビデオを見たらどうなるのか、という疑問への答えでもある(原作では呪いのビデオの正体はウイルスのため、疑問はない)。
映画『リング』の呪いのビデオは、いわば民法における到達主義だが、『裏バイト』の呪いのビデオは発信主義のため、効力が保留になる。
・裏バイト…高校時代を通じて赤川と藍川は裏バイトに励む。だが、呪いのビデオのダビング以外は超常現象が関係しない、実話怪談系の裏バイトだったらしい。藍川曰く、脳が腐る。
じつは白浜と黒嶺が超常現象が関係する裏バイトばかり斡旋されていたのは、黒嶺弥生の陰謀だった。
本来、超常現象の発生率が現実とそれほど変わらないことは、呪具コレクターである赤川・八木姉弟の父親が最近まで無事だったことで示されている。
・第247話『決算報告』
【出水翠】…空間の一部を消滅させる。「四国九・九事件」というものを起こしたらしい(第242話)。
【マダライツヅ】…人間を壁の黒い染みにする。「東北事変」というものを起こしたらしい(同上)。
【イム】:歩く巨大な仏像。人間から命だけを奪うらしい。
「危険度:6」
「影響範囲:5」
・備考:黒嶺は弟妹と待ちかまえていた節がある。イムは御仏ではないが、終末の日に死は救済。
【ピンバッジ】:時空間を混乱させる(最終話)。
「危険度:5」
「影響範囲:8」
・備考:登場場面は映画『サイン』のニュース映像を思わせる。最終話で再登場。
【ビッグガール】:巨大怪獣。
「危険度:9」
「影響範囲:5」
・備考:映画『シンクロナイズドモンスター』を思いだす。映画も数百人を圧殺してハッピーエンドらしく終わっているから、たいがいホラー。
【呼称なし】:人間を変異させるが、認識不能なため詳細不明。
「危険度:9」
「影響範囲:5」
・【Q】
…研究機関、ではなく、学会のような研究機関と研究者の定期的な集会。『多重人格探偵サイコ』のガクソみたいなもの。"「ガクソは統一した意志を持たないリゾームですからね つまり階層化されたツリー状の組織が頂点に立つ者の意志で動くのに対して ガクソは個々が自立した組織体ということです」「何をエラソ〜に難しく説明しやがって よーはみんな自分勝手に行動してるってだけじゃねーか!!」"(『多重人格探偵サイコ』第9巻)。
・【黒嶺弥生】
…100万年前に生まれた最初の幽霊。
人間が死を否定したことで誕生した。
その現実との亀裂が100万年かけて広がり、人類は破局を迎えることになる。
死の否定とはいわゆるビッグ・ヒストリーの用語で言うところの認知革命。死を認識したことで、人類は遺伝子(ジーン)だけでなく知伝子(ミーム)を伝えるようになった。言語はおよそ200万年から、考古学的な証拠のある7万年前のあいだに誕生した。
だが、認知革命は現実と虚構、表と裏が分離することでもあった。動物なら、外敵に表と裏の区別はない。また、人類は本能的な闘争・逃走反応だけでない、恐怖と不安の感情ももつようになった。
そうして高度に精神的な存在になってなお、人類は肉体労働、底辺の仕事を行わなければ生きることはできない。
だから、黒嶺弥生がマージナルで、精神と肉体の違いのない裏バイトの従事者に倒されることは平仄が合っている。
黒嶺弥生自身はただの他人に憑依する幽霊で、とくに強くはない。
だが、一度流出したウイルスを完全に駆除することはできないように、根絶することは難しかったらしい。
