漫画

『ぼっち・ざ・ろっく!』山田はなぜ草を食うのか

" 蓮實 最後に無国籍性ということでもう少し言うと、シャブロルってひじょうにフランス的と思われているじゃないですか。事実、彼はパリに棲息しているひじょうにフランス的なグルメだしね。ゴダールは美味しいものなんて絶対食べたくないっていう人だけれど…

『おとなになっても』と『感情教育』

志村貴子の『放浪息子』はサルトルによるフローベール論『家の馬鹿息子』だ。『家の馬鹿息子』の主題はいかにしてフローベールが作家になったかだ。優秀な兄の弟であり、受動的な性格だったフローベールが作家になる。それは、言葉を使い、芸術家になること…

「プルーストにとって手紙の理想は、ドアの下に滑り込んだ短い紙きれである」:藤本タツキ『ルックバック』について

ドゥルーズとガタリの共著『カフカ』は、カフカの創作の起点を手紙におく。 手紙は次のような機能をもつ。運動を言表の主体(媒体)へと転移させ、言表行為の主体(作者)から免除する。 カフカの作品では、言表(表現)が内容に先行する。これはマイナー文…

ギャンブル漫画・必勝法と逆転劇一覧 - 『賭博黙示録カイジ』『嘘喰い』『ジャンケットバンク』『賭ケグルイ双』 -

※『賭博黙示録カイジ』『嘘喰い』『ジャンケットバンク』『喧嘩稼業』『バトゥーキ』『地雷グリコ』のネタバレ注意。 1.ゲームの設定 - 天才と凡夫 - 2.デスゲームもののクソ漫画 - 凡夫と凡夫 - 3.ゲームのプレイヤーの調整 - 嘘つきと正直 - 4.い…

廾之著『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』読解 - 橘ありす=時任謙作=竹原秋幸 -

1. 要約 2. 本論「物語に対抗する物語」 2-1. 『暗夜行路』と『枯木灘』 2-1-1. 序論 2-1-2. 『暗夜行路』 2-1-3. 『枯木灘』 2-1-4. 『U149』 2-1-4-1. 序論 2-1-4-2. 第1-3話『第3芸能課①』-『第3芸能課③』 2-1-4-3. 第4-6話『橘ありす①』-『橘ありす③』 2…

『裏バイト』怪異の影響力・危険性ランキング

※最新7巻まで全話ネタバレ注意 『裏バイト』怪異の影響力(X軸)・危険性(Y軸) ポジショニングマップメーカー ・凡例 ・"話数"『"話名"』 【"怪異名"】:"怪異の概要"「危険度:"0-9"」(0=中立 9=関わった人間は確実に死ぬ)「影響範囲:"1-5"」(1=個…

模造クリスタル『ゲーム部』感想 - 「日常系マンガ」の極北にして金字塔 -

※ネタバレ注意。 傑作です。未読のかたは書籍化を待つか、ただちに同人版を読むことをお勧めします。ただし、最終巻の『ゲーム部⑪ファイナル』と、おまけの『ゲーム部⑫エクストラコンテンツ』はダウンロード販売されていません。 (関連:『スペクトラルウィ…

スコット・マクラウド『THE SCULPTOR』あらすじ・感想メモ

批評と実作は車の両輪だ。しかし、マンガは実績のある作家による批評、解説書が乏しい(お分かりのとおり、暗に既存の批評、解説書を批判している)。 スコット・マクラウドの『マンガ学』は、例外的な秀逸なマンガの解説書だ。しかし、批評と実作は相補的な…

マンガのコマ割りの個人的な研究メモ

マンガのコマ割りの個人的な研究メモ 1.前書 実作にかかろうとしたが,その前に研究の必要を感じた.つまり,現実逃避だが,現実逃避にしてもまだ生産的なほうだろう. なぜ研究の必要があるのか. ただ映像作品の絵コンテを画面に割当てればいいなら,問…

『スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険』感想 - 毒物を仕込んだリンゴをスケッチし、その後、それを齧って自殺した男 -

『スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険』について。 《君は新聞の三面記事などに生活難とか、病苦とか、或は又精神的苦痛とか、いろいろの自殺の動機を発見するであらう。しかし僕の経験によれば、それは動機の全部ではない。のみならず大抵は動…

グレゴール・ザムザ焼き - 『ご飯は私を裏切らない』 -

ヤングエースUPで連載されているheisoku著『ご飯は私を裏切らない』が面白い。主役は29歳、フリーター、独身、独居、中卒、職歴なし(※正規雇用について)、交友関係なしの《私》だ。《私》が短期のバイトと日雇い派遣労働で日々を過ごしつつ、食事で人生の…

『ラーメン才遊記』全話レビュー

ついでなので『才遊記』の内容もまとめる。全11巻なので、この記事で内容を確認しようとしているひとがいるなら、実際に読んだほうが早いです。 ○第1巻「フムフムとワクワク」 ・第1-3杯:汐見ゆとり登場。初めてラーメンを食べたのが半年前というが、…

『ラーメン発見伝』全話レビュー

個人的なメモを兼ねて。全話ネタバレ。 ○第1巻「繁盛店のしくみ」 記念すべき第1巻だが、第1-3話があまり面白くない。 ・第1杯「ラーメン、会社員、現る!!」 記念すべき第1話なのにあまり面白くない… のだが、この第1話で転任した前課長の挿話が最終…

『金田一少年の事件簿』全作レビュー

なぜいま『金田一少年の事件簿』なのかというと、アンソニー・ホロヴィッツの『カササギ殺人事件』を読んだからだ。ミステリのすばらしさを称揚する本作で、古色蒼然たるミステリのすばらしさを思いださされた。そう。私たちはクローズド・サークル、連続殺…

なぜ『ALTER EGO』はヒットしたか 文学的読解

筆者の診断記録 アプリゲーム『ALTER EGO』をクリアした。 ノンプロモーションでありながら約1週間で10万インストールという異例のヒット作だ。私自身、名作だと感じた。 ゲームシステムは単純で、1.『クッキークリッカー』 2.性格診断 3.恋愛シミュレーショ…

『放浪息子』と『家の馬鹿息子』 - 志村貴子論 -

(戦争体験者のサルトルの村焼き。本論とは関係ない) 『放浪息子』は名実ともに志村貴子の代表作だろう。『放浪息子』は〈放蕩息子〉の言葉遊びだが、文学史上、もっとも名高い〈放蕩息子〉はサルトルの『家の馬鹿息子――1821年から1857年にかけてのギュスタ…