若島正の戦後アメリカ小説100冊

小説

・若島正『乱視読者の新冒険』「戦後アメリカ小説の百冊」より（初出：『英語青年』1998年8月号）。

 

・凡例：並びは発表年順（出典どおり）。未訳は原題に若島による仮題を付記。複数訳は出典に従う。

 

１．個人的ベスト・テン

 

  1. トルーマン・カポーティ『遠い声遠い部屋』
  2. ジョン・チーヴァー『ワップショット家の人びと（ワップショット家年代記）』
  3. ジョゼフ・ヘラー『キャッチ＝22』（ヘタウマ）
  4. ジェイムズ・ボールドウィン『もう一つの国』
  5. トマス・ピンチョン『V.』
  6. ジョン・アップダイク『カップルズ』（マニア向け）
  7. ウラジーミル・ナボコフ『アーダ』（マニア向け）
  8. フィリップ・ロス『ポートノイの不満』
  9. ソール・ベロー『フンボルトの贈り物』
  10. ウィリアム・Ｈ・ギャス『The Tunnnel（トンネル）』

 

２．一般的ベスト・テン

 

  1. Ｊ・Ｄ・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』
  2. リチャード・ライト『アウトサイダー』（最高傑作は20世紀アメリカ小説のそれである『アメリカの息子』）
  3. ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』
  4. ジョン・アップダイク『走れウサギ』
  5. ソール・ベロー『ハーツォグ』
  6. イエールジ・コジンスキー『異端の鳥（塗られた鳥）』（個人的には『The Hermit of 69th Street（69番街の隠者）』）
  7. カート・ヴォネガット『スローターハウス５』
  8. フィリップ・ロス『男としての我が人生』
  9. ドナルド・バーセルミ『死父』
  10. バーナード・マラマッド『ドゥービン氏の冬』（円熟期）

 

３．超大作ベスト・テン

（フィリップ・ロス『素晴らしいアメリカ野球』の系列）

 

  1. ソール・ベロー『オーギー・マーチの冒険』
  2. ウィリアム・ギャディス『The Recognitions（認識）』
  3. ジョン・バース『酔いどれ草の仲買人』
  4. トマス・ピンチョン『重力の虹』
  5. ウィリアム・スタイロン『ソフィーの選択』
  6. ノーマン・メイラー『Ancient Evenings（古代の宵）』
  7. ウィリアム・Ｔ・ヴォルマン『きみたち輝ける復活天使たち』（部分訳。所収『ヴォルマン、お前はなに者だ！』）
  8. リチャード・パワーズ『黄金虫変奏曲』
  9. デイヴィッド・フォスター・ウォレス『Infinite Jest（道化狂い）』
  10. ドン・デリーロ『アンダーワールド』

 

　若島曰く「じつは読みきったのは半分」。

 

４．短編集ベスト・テン（選集は除外）

 

  1. トルーマン・カポーティ『夜の樹』
  2. Ｊ・Ｄ・サリンジャー『九つの物語』
  3. ジョン・アップダイク『鳩の羽根』
  4. ジョン・チーヴァー『The Brigadier and the Golf Widow（准将とゴルフ未亡人）』
  5. アイザック・バシェヴィス・シンガー『短かい金曜日』
  6. ジョン・バース『びっくりハウスの迷子』（邦訳は表題作のみ）
  7. ドナルド・バーセルミ『口に出せない習慣、不自然な行為』
  8. ロバート・クーヴァー『Pricksongs and Descants（プリックソング＆デスカント）』
  9. ピーター・テイラー『In the Miro District（ミロ地区にて）』
  10. レイモンド・カーヴァー『大聖堂』

 

　10選に限らなければ、アーウィン・ショー、ハロルド・ブロードキー、ジョイス・キャロル・オーツなど。

 

５．女性作家ベスト・テン

 

  1. フラナリー・オコナー『賢い血』
  2. メアリー・マッカーシー『The Groves of Academe（学園の森）』（最高傑作は自伝『Memoirs of a Catholic Childhood（カトリック育ち）』）
  3. キャサリン・アン・ポーター『愚者の船』
  4. ジョイス・キャロル・オーツ『Bellefleur（ベルフルール）』
  5. トニ・モリソン『タール・ベイビー』
  6. アン・タイラー『アクシデンタル・ツーリスト』
  7. マキシーン・ホン・キングストン『Tripmaster Monkey（偽書孫悟空）』
  8. シンシア・オジック『ショールの女』（評論のほうが良い）
  9. スーザン・ソンタグ『火山に恋して』（同上）
  10. Ｅ・アニー・プルー『シッピング・ニュース』

 

６．ＳＦベスト・テン

 

  1. レイ・ブラッドベリ『火星年代記』
  2. シオドア・スタージョン『人間以上』
  3. アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ！』
  4. サミュエル・Ｒ・ディレイニー『バベル17』
  5. トマス・Ｍ・ディッシュ『キャンプ・コンセントレーション』
  6. フィリップ・K・ディック『ユービック』
  7. アーシュラ・K・ル＝グウィン『闇の左手』
  8. Ｒ・Ａ・ラファティ『Fourth Mansions（第四の宿）』
  9. ウィリアム・ギブソン『ニューロマンサー』
  10. ダン・シモンズ『ハイペリオン』

 

　王道。とくにSF黄金時代の3冊、ことにベスター。

 

７．幻想怪奇小説ベスト・テン（8冊）

 

  1. シャーリー・ジャクソン『山荘綺談』
  2. ピーター・Ｓ・ビーグル『最後のユニコーン』
  3. ジャック・フィニイ『ふりだしに戻る』
  4. ピーター・ストラウブ『ゴースト・ストーリー』
  5. ジーン・ウルフ『新しい太陽の書』四部作
  6. ジョン・クローリー『リトル、ビッグ』
  7. スティーヴン・キング『IT』
  8. ロバート・マキャモン『少年時代』

 

８．ミステリベスト・テン（6冊）

 

  1. ミッキー・スピレーン『裁くのは俺だ』
  2. ジム・トンプスン『内なる殺人者』
  3. レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』
  4. アイラ・レヴィン『死の接吻』
  5. ロス・マクドナルド『ウィチャリー家の女』
  6. ジェイムズ・エルロイ『ブラック・ダリア』

 

　作家ならマーガレット・ミラー、パトリシア・ハイスミスなど。

 

９．カルト小説ベスト・テン

 

  1. ジャック・ケルアック『路上』
  2. ウィリアム・Ｓ・バロウズ『裸のランチ』
  3. リチャード・ブローティガン『アメリカの鱒釣り』
  4. イシュメール・リード『マンボ・ジャンボ』
  5. ウィリアム・コツウィンクル『バドティース先生のラブ・コーラス（扇風機男）』
  6. トム・ロビンス『カウガール・ブルース』
  7. ギルバート・ソレンティーノ『Mulligan Stew（マリガン・シチュー）』
  8. ラッセル・ホーバン『Riddley Walker（リドリー・ウォーカー）』
  9. ジョン・ケネディ・トゥール『愚か者同盟（愚か者大連盟）』
  10. スティーヴ・エリクソン『彷徨う日々』

 

１０．その他（16冊）

 

  1. エドマンド・ウィルソン『ヘカテ郡回想録』（邦訳は抄訳のみ）
  2. ネルソン・アルグレン『黄金の腕』
  3. ジェイムズ・ジョーンズ『地上より永遠に』
  4. ラルフ・エリソン『見えない人間』
  5. アナスイ・ニン『愛の家のスパイ』
  6. ジェイムズ・エイジー『A Death in the Family（家族の中の死）』
  7. ジョゼフ・マッケルロイ『The Smuggler's Bible（密輸者の聖書）』
  8. フレデリック・エリスリー『A Fan's Notes（ファンの手記）』
  9. アーウィン・ショー『富めるもの貧しきもの』
  10. ジョン・ベリマン『Recovery（恢復）』（詩のほうが良い）
  11. エドマンド・ホワイト『Forgetting Elena（エレナを忘れて）』
  12. ハリー・クルーズ『The Gypsy's Curse（ジプシーの呪い）』
  13. ゴア・ヴィダル『Duluth（ダルース）』（評論のほうが良い。最高傑作は『United States:Essays（合衆国）』）
  14. オスカー・イフェロス『マンボ・キングズ、愛のうたを歌う』
  15. ニコルソン・ベイカー『中二階』（『フェルマータ』は愚作）（新参として）
  16. ジョン・ホークス『Sweet William（スイート・ウィリアム）』（古参として）