2019-01-01から1年間の記事一覧

匿名ラジオ・番外編『久川凪について考える』

恐山 「ちょっと聞いてくださいよARuFaさん」ARuFa「なんだい恐山」恐山 「半年くらい前に、オモコロで《デレステの久川凪は俺たちのことを知っているかもしれない》っていう企画をやったじゃないですか」ARuFa「あー。普通、二次元のキャラクターは三次元の…

デヴィッド・ベネター『生まれてこないほうが良かった』要約

本稿の著作権・著作人格権は完全に放棄する。無断での利用・転載はむしろ推奨する。 ○第1章『序論』p.10 子供を産むことの決断には様々な理由があるだろうが、そこに存在することになる子供の利害が含まれているはずはない。 ●『誰がそんなに幸運なのか?』…

『スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険』感想 - 毒物を仕込んだリンゴをスケッチし、その後、それを齧って自殺した男 -

『スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険』について。 《君は新聞の三面記事などに生活難とか、病苦とか、或は又精神的苦痛とか、いろいろの自殺の動機を発見するであらう。しかし僕の経験によれば、それは動機の全部ではない。のみならず大抵は動…

『雪が白いとき、かつそのときに限り』の語りについて 幻滅と幻影 - リウィウス、マキャベリ、陸秋槎 -

(※本稿は『雪が白いとき、かつそのときに限り』の犯人、犯行方法、動機に関する深刻なネタバレを含む。よって、本書を未読のものが読むことを禁ずる。) 陸秋槎の『雪が白いとき、かつそのときに限り』(稲村文吾訳、2019年、早川書房)は、2017年に中国、…

グレゴール・ザムザ焼き - 『ご飯は私を裏切らない』 -

ヤングエースUPで連載されているheisoku著『ご飯は私を裏切らない』が面白い。主役は29歳、フリーター、独身、独居、中卒、職歴なし(※正規雇用について)、交友関係なしの《私》だ。《私》が短期のバイトと日雇い派遣労働で日々を過ごしつつ、食事で人生の…

『仮面の少女・櫻井桃華』に寄せて - 文学・経済・アイドル -

ソーシャルゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ』(バンダイナムコエンターテインメント)のメディアミックスであるコミックの、廾之著『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149』(以下、『U149』と表記)は高い文芸性を誇る。 その《櫻井桃華編》…

私選:洒落怖・怖い話・ホラー映画

・ホラーの2つの問題 いわゆるホラーというジャンルには、質によって性格の異なる2種が存在する。これがホラーの第1の問題だ。例えば稲川淳二の怪談と、伊集院光の怪談だ。稲川淳二の怪談はしめやかに怖く、語りにより涼感を得ることができる。伊集院光の…

『天気の子』とミレニアル世代のオタクの文化史・補論:現代日本批評の裏面史

柄谷行人と渡部直己の対談によれば、現在、日本において《批評》というものは消えかかっており、一方で東浩紀が《ゲンロン》で、一方で山城むつみが『すばる』で、その傾向に抵抗しているらしい。 渡部:でも、海外はともかく、僕が学生の頃に日本で一番輝い…

『天気の子』とミレニアル世代のオタクの文化史

ゼロ年代 『天気の子』を観た。 100点満点中の100点満点だった。 が、脚本は酷い。 ヒロインの陽菜が明日、誕生日だとわかる。主人公の帆高がプレゼントを用意する。「ああ、明日、悲劇的なことが起こるのだな」と予想すると、そのとおりになる。酷い。 その…

《セカイ系》定義論・私論

私はセカイ系が好きだ。 しかし、いわゆる《セカイ系》という定義に内容のないことはすでに周知されている。これは前島賢の『セカイ系とは何か』が詳しい。 そもそも、《セカイ系》の定義である《「主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係…

『"文学少女"』シリーズの卓越した構成

野村美月の『"文学少女"』シリーズは全7作(全8巻)、本編完結後に出版された外伝が8作(巻数同じ)の構成だ。 第1巻および第8巻の後書きによると、本作は野村の持込み企画だったらしい。そして、第7巻の後書きによると、全7作の構成は企画の通りだっ…

つぐみのおっぱいが大きい方がいいと言うプレイヤーは『ガルパ』の文芸的な読解ができていない

5月27日、アプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』において、公式の告知として《羽沢つぐみの一部のLive2Dキャラクターの胴体部分において、想定と異なる箇所がございましたため、近日中に修正を予定しております。》なることが発表されまし…

『いでおろーぐ!』全7巻感想

椎名十三著『いでおろーぐ!』全7巻が思いがけない佳作だったため、感想をしるす。 第1巻のおおまかな内容は2つある。第1に、いわゆる「非モテ」による共産主義と、かつての学生運動、現代の共産主義の学生団体のパロディだ。第2に、アンチラブコメのラ…

『White Album2』の物語の構造分析

WhiteAlbum2 『元年春之祭』の陸秋槎が『ミステリマガジン』2019年3月号の寄稿において、影響を受けた作品のなかで、『CROSS†CHANNEL』『キラ☆キラ』『White Album2』の3作を「魂の名作」と評していた。 いわゆるエロゲの成熟期における代表的なシナリ…

『ラーメン才遊記』全話レビュー

ついでなので『才遊記』の内容もまとめる。全11巻なので、この記事で内容を確認しようとしているひとがいるなら、実際に読んだほうが早いです。 ○第1巻「フムフムとワクワク」 ・第1-3杯:汐見ゆとり登場。初めてラーメンを食べたのが半年前というが、…

『ラーメン発見伝』全話レビュー

個人的なメモを兼ねて。全話ネタバレ。 ○第1巻「繁盛店のしくみ」 記念すべき第1巻だが、第1-3話があまり面白くない。 ・第1杯「ラーメン、会社員、現る!!」 記念すべき第1話なのにあまり面白くない… のだが、この第1話で転任した前課長の挿話が最終…

2019年度私的百合マンガ大賞(付・百合小説大賞)

昨年、百合マンガの年間ベスト( 2018年度私的百合マンガ大賞(付・百合小説大賞) - 白樺日誌 )を自選してみた。先日、見返したところなかなかいい趣味だった。ややサブカル寄りな気もしたが、ある視点からした2018年の年間傑作選としてはかなり参考に…

『金田一少年の事件簿』全作レビュー

なぜいま『金田一少年の事件簿』なのかというと、アンソニー・ホロヴィッツの『カササギ殺人事件』を読んだからだ。ミステリのすばらしさを称揚する本作で、古色蒼然たるミステリのすばらしさを思いださされた。そう。私たちはクローズド・サークル、連続殺…

なぜ『ALTER EGO』はヒットしたか 文学的読解

筆者の診断記録 アプリゲーム『ALTER EGO』をクリアした。 ノンプロモーションでありながら約1週間で10万インストールという異例のヒット作だ。私自身、名作だと感じた。 ゲームシステムは単純で、1.『クッキークリッカー』 2.性格診断 3.恋愛シミュレーショ…