2024-01-01から1年間の記事一覧

はやみねかおるの隠れた代表作『復活!!虹北学園文芸部』

※ネタバレ注意 はやみねかおるのノンシリーズの代表作は何でしょう。 『ぼくと未来屋の夏』、『僕と先輩のマジカル・ライフ』というミステリーの他に、『復活!!虹北学園文芸部』という作品があります。 『復活!!虹北学園文芸部』はいわゆる「八犬伝」の物語…

『PERFECT DAYS』の主題歌はYOASOBI

ヴィム・ヴェンダース監督『PERFECT DAYS』でもっとも謎めいているのは、最後のシーンの長回しと、なぜかそれが感動をもたらすことだ。 映画は平山の日常で始まる。平山の日課は固定されている。銭湯の開場と同時の入場、居酒屋の「いつもの」という注文で、…

『ジョーカー』にありがちな誤解

トッド・フィリップス監督『ジョーカー』にありがちな誤解は、押井守が言う「『ジョーカー』はジョーカーに悪役の美学がないから駄作だ」というものだ。 『ジョーカー』のあらすじを確認しよう。 売れないコメディアンのアーサーは、ある日、行きがかりで暴…

『夜のみだらな鳥』にありがちな誤解

ホセ・ドノソの『夜のみだらな鳥』は「グロテスク」や「難解」と形容されることが多いです。 作品を宣伝するときは、扇情主義のため、誇張表現を使いがちです。 ですが、実際に作品を鑑賞するときは、そうした粉飾だけに注意すると、鑑賞体験は貧しいものに…

「世界の蝶番が外れてしまった」:西川美和『すばらしき世界』

西川美和監督『すばらしき世界』は、知能でなく社会的能力の『アルジャーノンに花束を』だ。最後の場景にうち捨てられた花束を映すことで、その図式を明示している。大衆の総意ともいうべき、人気映画レビューサイトの「映画にわか」も、そう説明している。 …

「プルーストにとって手紙の理想は、ドアの下に滑り込んだ短い紙きれである」:藤本タツキ『ルックバック』について

ドゥルーズとガタリの共著『カフカ』は、カフカの創作の起点を手紙におく。 手紙は次のような機能をもつ。運動を言表の主体(媒体)へと転移させ、言表行為の主体(作者)から免除する。 カフカの作品では、言表(表現)が内容に先行する。これはマイナー文…

推理小説とラブロマンス、ミステリとラブコメ、そして『冬期限定ボンボンショコラ事件』

※『トレント最後の事件』と『第八の地獄』、『毒入りチョコレート事件』と『最上階の殺人』、『虚無への供物』のネタバレ注意。 ※『SHERLOCK』の『ベルグレービアの醜聞』、『劇場版名探偵コナン 黒鉄の魚影』、『別れる決心』、「小市民」シリーズの深刻な…

ギャンブル漫画・必勝法と逆転劇一覧 - 『賭博黙示録カイジ』『嘘喰い』『ジャンケットバンク』『賭ケグルイ双』 -

※『賭博黙示録カイジ』『嘘喰い』『ジャンケットバンク』『喧嘩稼業』『バトゥーキ』『地雷グリコ』のネタバレ注意。 1.ゲームの設定 - 天才と凡夫 - 2.デスゲームもののクソ漫画 - 凡夫と凡夫 - 3.ゲームのプレイヤーの調整 - 嘘つきと正直 - 4.い…

2024年度私的百合マンガ大賞(付・百合小説大賞)

2023年度私的百合マンガ大賞(付・百合小説大賞)(https://snowwhitelilies.hatenablog.com/entry/2023/02/08/225429) 2022年度私的百合マンガ大賞(付・百合小説大賞)(https://snowwhitelilies.hatenablog.com/entry/2022/02/14/221729) 2021年度私的…