ゼロ年代
『天気の子』を観た。 100点満点中の100点満点だった。 が、脚本は酷い。 ヒロインの陽菜が明日、誕生日だとわかる。主人公の帆高がプレゼントを用意する。「ああ、明日、悲劇的なことが起こるのだな」と予想すると、そのとおりになる。酷い 。 その粗漏さは冲方丁が「改善案」という形で穏当に指摘している 。「拳銃が物語から浮いている。どうしても登場させるなら、その拳銃で天気の龍を撃つなどして活用すべきでは?」。ホントだよ 。「手錠が画面の邪魔だ。どうしてもはめるなら、その手錠で帆高と陽菜を繋ぐべきでは?」。ホントだよ 。 以下、物語を確認しよう。 家出少年の帆高は、東京をさまよった末、フリーの雑誌記者の須賀に拾われる。この過程でフリーターの陽菜と知りあい、また、拳銃を拾う(酷い )。須賀や、その姪の夏美とともに日常を過ごす。チンピラに絡まれていた陽菜を助ける。陽菜の金に困っていることと、天候を操作する能力を知り、2人で《晴れ女》の仕事をはじめる。陽菜の弟の凪とも親しくなる。が、天候を操作する能力には代償があった。このままでは陽菜は消えてしまうらしい。しかも、それは異常気象を正常にするための生贄として社会に必要なことらしい。また、陽菜と凪の家庭には児相が、帆高には警察が迫っていた。帆高、陽菜、凪の3人は逃避行をはじめる。その過程で陽菜は能力を使い、ますます消耗する。そして、陽菜は消失する。帆高は捕まる。陽菜をとり戻すため、帆高は警察から逃走する。ここが山場になっている(陽菜が生贄として犠牲になることと、児相と警察が帆高らを捕まえようとすることの関連性が低いため、盛りあげが不自然なものになっている。酷い )。社会の代弁者だった須賀、夏美もここにきて翻意し、帆高を手助けする。凪も駆けつける(盛りあげのためだが、時間的にありえない。明らかな脚本の矛盾。酷い )。そして、世界を代償に、帆高は陽菜をとり戻す。 ここまでは微妙だ。だが、このあとのラスト5分が素晴らしい。 3年後、異常気象は続き、東京は水没していた(いくら雨が降っても海面は上昇しない。平均気温が上昇したことの説明を省略しただけだと思うことはできるが、酷い )。保護観察処分が満了し、帆高はふたたび東京に赴いた。須賀たちは世界の変化を「ただの自然現象で受けいれるしかない」「そもそも、個人が世界を変えられるはずがない。おかしな幻想を抱くな」と言い、罪悪感を抱く帆高を慰める。そして、帆高は陽菜と再会する。そのとき、雲間から日射しが差す。陽菜が能力を使っていた。大事な人と再会するときに晴れていてほしいから。そのためだけに、世界を代償にする能力を。帆高は確信する。「ちがう、やっぱりちがう! あのとき、僕は僕たちはたしかに世界を変えたんだ! 僕は選んだんだ、あの人を、この世界を! ここで生きていくことを! 」。暗転、エンドロール。 スタンディングオベーション 。拍手喝采 。 SNSを見たら、観客の半分くらいはこの結末に憤っていた。ウケる 。『おやすみシェヘラザード』のコラボ漫画を読むと、試写会の反応もドン引きだったらしい。 その反応はもっともなものだ。2011年の死者1万5000人、行方不明者2500人を出した東日本大震災 から8年しか経っていない。『天気の子』で異常気象による直接の死者は描かれていないが、少なくとも東京が水没したあとは、罹災者のなかに震災関連死と同じ原因の死者が相当数出ているだろう。 しかし、私の見るかぎり、いわゆるミレニアル世代は『天気の子』に熱狂している。彼らが中高生のときにプレイした2000年代のエロゲー の経験を呼びおこしたらしい。少なくとも私はそうだ。陽菜が登場したあと、夏美が登場したときに「《攻略可能ヒロイン》だ」と思ったし、前半を「《日常パート》だ」と思ったし(私は当時からエロゲー の《日常パート》の冗長さは問題だと思っていた)、陽菜が消えるときに「いつものこととはいえ、エロシーンの前後に重要なイベントを配置するのはシナリオの温度差が激しいのでやめてほしい」と思ったし、クライマックスで帆高が拳銃を構えたときに「《拳銃を撃つ》《拳銃を撃たない》」という選択肢が見えて「《拳銃を撃つ》を選択すると《陽菜トゥルーエンド》、《拳銃を撃たない》を選択すると《陽菜グッドエンド》だな」と漠然と理解した。「1周目では《陽菜トゥルーエンド》には到達できず、誰かのグッドエンドを開放するとタイトル画面が雨から晴れに変わって、《陽菜トゥルーエンド》を開放するとふたたび雨になり、もう変化しない」という言説も「言葉」でなく「心」で理解できた 。なんなら原作のエロゲー が「2ch ベストエロゲー 」や「萌えゲーアワード」で下位に入賞していた気すらした 。 2000年代前半に、アキバ系 サブカルチャー で多種多様な意欲作が発表された。こうした作品はのちに《ゼロ年代 》と分類されることになる。また、その一部は《セカイ系 》と呼ばれた。2000年代はとくにエロゲー の躍進が目立ち、これはCD-ROMのノベルゲームが比較的、初期費用がかからず、有志が起業しやすかったためだと思われる。そして、新海誠 もそうしたエロゲー のメーカーであるminori の映像作家として、その経歴をはじめることになる。 その後、新海誠 は2002年、自主制作映画の『ほしのこえ 』で注目を集め、2004年、初の商業映画である『雲の向こう、約束の場所 』を発表する。この2作はまさに《セカイ系 》だった。 『天気の子』につき、脚本の粗漏さを論難したが、じつは新海誠 の作劇の貧弱さは初めからのものだ。『きみのこえ』は時間論を重視した実存主義 を主題として、批評的に高い評価を得た。が、自主制作映画ということで過大評価されているが、30分未満の小品で、主題は高度に文学的だが、その脚本における具体化は単純だ。『雲の向こう、約束の場所 』は青春の喪失感を主題としているが、脚本はやはり単純だ。眠りつづける青春時代の恋人を小型飛行機に乗せて、《塔》まで飛行する。そのおかげで恋人は目覚めるが、代償にかつての思い出は失われる。『星を追う子供』はジブリ 映画の模作だし、『秒速5センチメートル 』と『言の葉の庭 』はさらに酷い。なにが酷いかと言えば、つまらない上に気持ち悪かった。『君の名は。 』の「男女間の精神転移、精神転移に時間差があったというどんでん返し、それによる救出劇」という筋書きはゲーム『Remember11 』の盗用で、そのことは南極観測隊員すら南極で呆れていた 。 『天気の子』は個人と社会の対立を主題としているが、児相と警察はつねに無謬で、帆高たちの《子供の理屈》も自明のものとされ、高井刑事の髪型をリーゼントにして深刻さを緩和しているように、その描写はきわめて戯画的だ。帆高たちは一緒にいるために社会と対立するが、べつに陽菜と凪が異なる養親か施設で養育されるとは限らないし、帆高とも会えなくなるわけではない。酷い 。 ただ、「妻と死別し、別居する幼い娘のいるフリーの雑誌記者」というステレオタイプ なキャラク ターである須賀に違和感がなく、夏美が魅力的だったのは意外だった。これは新海誠 の過去の監督作品にはないことだった。もっとも、これは演者である小栗旬 と本田翼の功績も大きいだろうが。プロの俳優はすごい。しかし、陽菜がじつは年下であることはもっと前倒しで明かした方がよかった。おそらく帆高が自責の念にかられる場面に繋げたかったのだろうが、そうすれば、年上の夏美との対比で、陽菜をはるかに魅力的に描写することができたはずだ。新海誠 は処女作から一貫してヒロインを物語の道具立てとしてしか使用していない。おそらく、もともと興味がないのだろう。 では、なぜミレニアル世代は『天気の子』に熱狂したのか? 2000年代前半にブームを築いたエロゲー だが、そのために制作コストとユーザーの時間コストは無限に上昇し、2010年代にはシナリオ重視のエロゲー は衰退した。2010年に発売された『WHITE ALBUM2 』はエロゲー の代表作だが、プレイ時間が60-80時間ある。おそらく、本作がエロゲー ブームの掉尾だった。エロゲー そのものの市場規模も最盛期の2006年の350億円から150億円まで縮小している。2000年代のエロゲー のシナリオライター はライトノベル やアニメの脚本に転出し、もはや戻らない。また、エロゲー ブームはライトノベル や漫画、アニメに類似のジャンルを創造し、それがエロゲー の市場規模の縮小を補填した。そのため、もはや需要は回復しない。 また、ライトノベル も2000年代の栄華を失った。ライトノベル の市場規模は最盛期の2012年の280億円から160億円まで減少している。書店の売場面積はウェブ小説の書籍化が補填し、こちらは市場規模は増大しつづけ、そのため、もはや需要は回復しない。一方、ウェブ小説は小説投稿サイトの順位制のために、先行作との類似と、短く簡単な構成、半永久的な継続が要求され、2000年代のライトノベル のような挑戦的な作品を書くことはできない。 つまり、ミレニアル世代における《ゼロ年代 》は失われた夢だ。 また、批評はこれに対して何も応答できなかった。いまでは周知されているとおり、2001年の東浩紀 の『動物化するポストモダン 』は無内容だった。東浩紀 はデリダ 批判からその経歴をはじめたが、デリダ が文学について凡庸なのは蓮實重彦 が指摘するとおりだ(『ユリイカ 《総特集=蓮實重彦 》』)。デリダ の『マルクス の亡霊たち』への反論である論文集の『Ghostly Demarcations』において、フレドリック・ジェイムソン はそもそもデリダ の記号論 は、記号から意味を捨象するだけで無意味なものだったと指摘している。皮肉なことに、そのためにデリダ の記号論 は後期資本主義ときわめて相性がよかった。東浩紀 が《ゲンロン》を創設し、論壇を維持しようと務めたことは立派だった。だが、その成果は皆無だった。デリダ 批判にはじまる東浩紀 の批評は、デリダ の記号論 の再演に終わり、無意味だった。60年代の『カイエ・デュ・シネマ 』の批評は実作と直結していた。《ゲンロン》の実作がなにかと言えば、『異セカイ系 』だ。クソだ。 木澤佐登志は『ニック・ランドと新反動主義 』の末尾で、ポツリとミレニアル世代を主題化している。それは木澤自身がミレニアル世代だからだろう。そして、木澤はミレニアル世代を中心とする新しい思潮のなかで、まるでニーチェ が亡霊のように徘徊しているようだと述べる。それは偶然ではなく、加速主義などの新しい思潮が思想的背景とするドゥルーズ の思想は、ヘーゲル 主義を排撃し、ニーチェ を顕揚する『差異と反復』からはじまった。ヘーゲル 主義は資本主義の亡霊であり、マルクス はニーチェ の後継者だ。デリダ の記号論 は、ただのヘーゲル 主義だ。 『天気の子』のラスト5分の爽快さは、まさにニーチェ だ。 フレドリック・ジェイムソン は『政治的無意識』で、19世紀末のジャック・ロンドン の作品をもって、フィクションが現実から自立したと分析する。『天気の子』のラストに憤る観客は、フィクションと現実の区別がついていない。ドゥルーズ はガタリ との共著の『アンチ・オイディプス 』で、記号から意味を捨象することを《去勢》と呼び、それが人間を資本主義に適合させる方法だと述べた。《去勢》された消費者の群れ、ニーチェ の言う畜群。『天気の子』は現実の東京を直写的に描き、それを崩壊させることで、ひとつの世界観を表現した。『天気の子』はフィクションの現実に対する勝利宣言でもある。 左派加速主義の論者であるマーク・フィッシャーは『資本主義リアリズム』で、マーケティング はリスクを低減させるためのものであり、よって、マーケティング が浸透するとリスクテイカ ーによる挑戦的な作品はなくなると述べる。『天気の子』の新海誠 はまさにリスクテイカ ーだ(リスクを負ったはいいものの、失敗しそうな気はするが)。挑戦的な作品の代わりにもたらされるのは、鑑賞者に感情を押しつける、扇情的で情緒的な作品だ。ナボコフ の言う《クズ(トラッシュ)》。エロゲー のトゥルーエンドは情緒的で単純なグッドエンドではなく、文学性があるからトゥルーエンドと呼ばれる。資本主義リアリズムを相対化する、つまり、資本主義のシステムの外部の想像力をもつこと。フレドリック・ジェイムソン は『未来の考古学』でそのことをSFの特質だと述べた。それこそ文学性だ。また、マーケティング でもっとも重要なのはシリーズ化、IP化であり、物語に見事な結末をつけるトゥルーエンドとは真逆のものだ。丸戸史明は『WHITE ALBUM2』のPS3版の追加シナリオが《かずさグッドエンド》の後日談であることについて、《かずさトゥルーエンド》では物語が完全に決着しているから だと述べている。また、丸戸史明 は2012年の『冴えない彼女の育て方 』をもってライトノベル に転出し、商業的な成功をおさめたが、本作はいわば《グッドエンド》を所与の結末としてもつものだった。シリーズ作品であることが要求されるライトノベル において、その戦略が最善だと判断したのだろう。数年前から、『ORICON エンタメ・マーケット白書』、『出版指標年俸』、『出版月報』はライトノベル は収益をシリーズ作品の続刊に依存していることを分析している。つまり、エロゲー のトゥルーエンドとは、2つの意味で時代に逆らうもの なのだ。
いまこそ言おうではないか。「フェイスブック に登録し、『テラスハウス 』を観ている私大文系卒に、優れた作品を創造できる理由はない」と。 いま、アキバ系 サブカルチャー を1匹の亡霊が徘徊している。《セカイ系 》という名の亡霊が。
以下、2000年代のオタクの文化史を概観する。《ゼロ年代 》と深い関係があると思うものは太字 に、《セカイ系 》と深い関係があると思うものは赤字 にした。個人的な直観に依存しているのはご容赦願いたい。言うまでもなく、《 「主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する作品群のこと》という《セカイ系 》のよく知られた定義は、《中間項》という言葉の意味すらまちがっており、中学生の作文でしかない。しかし、「《セカイ系 》らしさ」というものは明らかに存在する。それを否定するのは、《セカイ系 》という定義を自明のものとすることと同様に、反知性的だ。一応、私はこういう傾向を「《セカイ系 》らしさ」だと考えている。参考:『《セカイ系》定義論・私論 』
○1979年
・時事:マーガレット・サッチャー がイギリス首相になる。ここから1980年代のサッチャー 、レーガン 、中曽根の新自由主義 がはじまる。経済における自由主義 と政治における保守主義 の融合した新自由主義 は、社会を不可逆に変化させた。
・映画:長谷川和彦 『太陽を盗んだ男 』…『新世紀エヴァンゲリオン 』との直接の影響関係。
○1981年
・推理小説 :島田荘司 『占星術殺人事件 』(1993年までに《御手洗潔 》シリーズ全9作を発表)
○1983年
・批評:浅田彰 『構造と力』…にはじまる、1980年代前半のニュー・アカ デミズムの流行。1990年の『近代日本の批評《昭和篇》』のころには鎮静化していた。
○1984年
・アニメ映画:押井守 『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー 』 ・SF小説:神林長平 『戦闘妖精・雪風 』
○1985年
・小説:村上春樹 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 』 …『灰羽連盟 』との直接の影響関係。
○1987年
・推理小説 :綾辻行人 『十角館の殺人 』(1992年『黒猫館の殺人 』まで《館》シリーズ全6作を発表)
○1988年
・推理小説 :法月綸太郎 『密閉教室』
○1989年
・推理小説 :山口雅也 『生ける屍の死』 ・漫画:荒木飛呂彦 『ジョジョの奇妙な冒険 』第3部連載開始(1992年完結)
○1990年
・アニメ映画:押井守 『機動警察パトレイバー 2 the Movie』 ・漫画:藤田和日郎 『うしおととら 』連載開始(1996年完結) 岩明均 『寄生獣 』連載開始(1995年完結) ・フランス映画:リュック・ベッソン 『ニキータ 』
○1991年
・推理小説 :麻耶雄嵩 『翼ある闇 メルカトル鮎 最後の事件』 山口雅也 『キッド・ピストルズ の冒涜』 ・映画:北野武 『あの夏、いちばん静かな海 』 ・アメリ カ映画:ジョナサン・デミ 『羊たちの沈黙 』
○1992年
・漫画:荒木飛呂彦 『ジョジョの奇妙な冒険 』第4部連載開始(1995年完結) 『金田一少年の事件簿 』連載開始(2001年完結) ・推理小説 :有栖川有栖 『46番目の密室』(1994年の『ロシア紅茶の謎』から1999年まで《国名》シリーズ全5作を発表) 法月綸太郎 『法月綸太郎 の冒険』(1999年、2002年に《法月綸太郎 》シリーズの短編集を発表)
○1993年
・推理小説 :麻耶雄嵩 『夏と冬の奏鳴曲』 山口雅也 『13人目の探偵士』 ・架空戦記 :佐藤大輔 『征途 』(1994年完結・全3巻) ・書籍:『完全自殺マニュアル 』 ・映画:北野武 『ソナチネ 』
○1994年
・推理小説 :京極夏彦 『姑獲鳥の夏 』(1998年の『塗仏の宴』上下巻まで《百鬼夜行 》シリーズ全6作を発表) はやみねかおる 『そして五人がいなくなる』(2002年の『『ミステリーの館』へ、ようこそ』まで《名探偵夢水清志郎 事件ノート》全8作・外伝2作を発表) 山口雅也 『日本殺人事件』…『ニンジャスレイヤー』の元ネタ。 『ミステリーズ』 ・漫画:青山剛昌 『名探偵コナン 』連載開始 ・アメリ カ映画(※):リュック・ベッソン 『レオン』
○1995年
・時事:地下鉄サリン事件 阪神・淡路大震災
・アニメ:庵野秀明 『新世紀エヴァンゲリオン 』 ・アニメ映画:押井守 『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊 』 ・漫画:荒木飛呂彦 『ジョジョの奇妙な冒険 』第5部連載開始(1999年完結) ・小説:保坂和志 『この人の閾』 ・アメリ カ映画:マイケル・マン 『ヒート』 ・ラジオ:『伊集院光 深夜の馬鹿力 』放送開始
○1996年
・エロゲ:Leaf 『雫』『痕』 ・アニメ映画:『金田一少年の事件簿 』 ・漫画:福本信行『賭博黙示録カイジ 』連載開始(1999年完結) ・推理小説 :森博嗣 『すべてがFになる The Perfect Insider』(1998年『有限と微小のパン The Perfect Outsider』までにS&Mシリーズ全10作を発表)…誤記ではなく、本当に3年で全10作を上梓した。その出番をもってはじまる『すべてがFになる』において登場した真賀田四季 というキャラク ターは、西尾維新 、野崎まどなどに強い影響を及ぼす。漫画的でありながら、そのことを巧みに隠蔽した漫画的な《天才》というキャラク ター。"「ほら、7だけが孤独でしょう?」"。 清涼院流水 『コズミック 世紀末探偵神話』(1997年『ジョーカー 旧約探偵神話』、1997-9年『カーニバル』、2004年『彩紋家事件 』の《JDC》シリーズを発表) ・小説:保坂和志 『季節の記憶』 ・映画:北野武 『キッズ・リターン 』 青山真治 『Helpless』 ・イギリス映画:『トレインスポッティング 』
○1997年
・エロゲ:Leaf 『ToHeart 』 ・アニメ:幾原邦彦 『少女革命ウテナ 』 ・アニメ映画:『劇場版名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』(2003年まで、こだま兼嗣 監督・古内一成 (野沢尚 )脚本の体制で全7作が発表される) ・漫画:久住昌之 ・谷口ジロー 『孤独のグルメ 』 ・推理小説 :麻耶雄嵩 『メルカトルと美袋のための殺人』 『鴉』 ・ドラマ:『踊る大捜査線 』 ・映画:黒沢清 『CURE 』 堤幸彦 『金田一少年の事件簿 上海魚人伝説』 ・ラジオ:『爆笑問題カーボーイ 』放送開始
○1998年
・ライトノベル :上遠野浩平 『ブギーポップは笑わない 』 『ブギーポップ ・リターンズ VSイマジネーター』 上下巻 ・エロゲ:key (※)・麻枝准 『ONE~輝く季節へ ~』 (※前身) Leaf 『WHITE ALBUM 』 ・ゲーム:小島秀夫 『メタルギアソリッド 』 ・アニメ:『カードキャプターさくら 』 (クロウカード編)(1999年完結)…もともと『カードキャプターさくら 』は《魔法少女 》モノのアイロニー で構成されていた。さくらの衣装はすべて《魔法少女 》モノのアニメに触発された手製という設定だ。それが、いわゆる《魔法少女 》モノの典型と見なされるのは皮肉と言う他ない。 『Serial experiments lain 』 ・漫画:冨樫義博 『HUNTER×HUNTER 』連載開始 ・映画:北野武 『HANA-BI 』 『踊る大捜査線 THE MOVIE 』
○1999年
・エロゲ:key・麻枝准 『Kanon 』 D.O.・田中ロミオ (※)『加奈~いもうと~』 (※別名義) ケロQ 『終ノ空 』 ・アニメ:『カードキャプターさくら 』(さくらカード 編)(2000年完結) ・アニメ映画:幾原邦彦 『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』 『金田一少年の事件簿 2 殺戮のディープブルー』 『劇場版カードキャプターさくら 』 ・漫画:あずまきよひこ 『あずまんが大王 』 (2002年完結。全4巻)…新装版はクソ。 ・推理小説 :殊能将之 『ハサミ男 』 ・ドラマ:堤幸彦 ・西荻弓絵 『ケイゾク 』 ・映画:黒沢清 『カリスマ』 是枝裕和 『ワンダフルライフ 』 ・アメリ カ映画:ウォシャウスキー 兄弟『マトリックス 』 デヴィッド・フィンチャー 『ファイト・クラブ 』
○2000年
・エロゲ:key・麻枝准 『AIR 』 TYPE-MOON ・奈須きのこ 『月姫 』 ニトロプラス ・虚淵玄 『Phantom-PHANTOM OF INFERNO 』 ・アニメ映画:『劇場版カードキャプターさくら 封印されたカード』 ・特撮:『仮面ライダークウガ 』 ・漫画:荒木飛呂彦 『ジョジョの奇妙な冒険 』第6部連載開始(2003年完結) 氷川へきる 『ぱにぽに 』連載開始(2011年完結) 『最終兵器彼女 』 (2001年完結) ・推理小説 :殊能将之 『美濃牛』 ・ドラマ:堤幸彦 『TRICK 』 『相棒 pre season』(2001年まで全3回) ・映画:青山真治 『EUREKA』 黒沢清 『回路』 堤幸彦 『ケイゾク /映画』 ・韓国映画 :パク・チャヌク 『JSA 』…にはじまる、キム・ギドク 、パク・チャヌク 、ポン・ジュノ ら《386世代》を中心とする韓国の映画監督の躍進がはじまる。パク・チャヌク は「なぜ『オールド・ボーイ 』を映画化したのか」と尋ねられ、「最高の漫画は『あずまんが大王 』と『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん 』だけど、僕にそれを映画化するだけの実力はないから」と答えるほどアキバ系 サブカルチャー に造詣が深い(『パク・チャヌク のモンタージュ 』)。 ・アメリ カ映画:クリストファー・ノーラン 『メメント 』 『アメリカン・サイコ 』
○2001年
・時事:アメリカ同時多発テロ事件 ジョージ・W・ブッシュ 大統領(第1期)就任。 第1次小泉内閣 の組閣。
・ライトノベル :秋山瑞人 『イリヤの空 、UFOの夏』 (2003年完結。全4巻) ・エロゲ:age『君が望む永遠 』 CRAFTWORK 『さよならを教えて 』 D.O.・田中ロミオ (※)『家族計画』 (※別名義) ニトロプラス ・虚淵玄 『吸血殲鬼ヴェドゴニア 』 公爵『ジサツのための101の方法』 ・ゲーム:巧舟 『逆転裁判 』 ・アニメ:真下耕一 『ノワール 』 ・特撮:『仮面ライダーアギト 』 ・漫画:久保帯人 『BLEACH 』連載開始(2016年完結)…『HUNTER×HUNTER 』と『BLEACH 』の息吹は、2016年連載開始の『鬼滅の刃 』を嚆矢として、『呪術廻戦』、『チェンソー マン』という2010年代後半のジャンプにおけるダークな異能バトル漫画のブームを形成する。これらは①無常観、②皮肉な雰囲気、③多少の感傷主義、という共通の特徴をもっていた。 ・推理小説 :殊能将之 『黒い仏 』 ・小説:舞城王太郎 『煙か土か食い物 』 佐藤友哉 『フリッカー式 鏡公彦 にうってつけの殺人』(2002年までに《鏡家サーガ 》全3作と『クリスマス・テロル 』を発表) ・映画:是枝裕和 『DISTANCE』 ・アメリ カ映画:『ドニー・ダーコ 』
○2002年
・ライトノベル :西尾維新 『クビキリサイクル 』 『クビシメロマンチスト 』 (2003年の『ヒトクイマジカル 』までに《戯言》シリーズ全6作を発表)…多読家である西尾維新 がはじめたニーチェ 的な主人公の人物造型は、2000年代のライトノベル に猛威をふるうことになる。入間人間 、渡航 など、直接的な影響を受けた作家も多い。 乙一 『GOTH リストカット 事件』 ・エロゲ:ライアーソフト ・星空めてお 『腐り姫 』 ニトロプラス ・虚淵玄 『鬼哭街 』 ・ノベルゲーム:KID・打越鋼太郎 『Ever17 』 竜騎士07 『ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編 』 ・ゲーム:巧舟 『逆転裁判2 』 ZUN『東方紅魔郷 』 ・アニメ:『灰羽連盟 』 ・アニメ映画:新海誠 『ほしのこえ 』 ・特撮:『仮面ライダー龍騎 』 ・漫画:『ローゼンメイデン 』連載開始(2007年完結) ・小説:村上春樹 『海辺のカフカ 』 ・ドラマ:堤幸彦 『TRICK 』 『相棒 season1』 ・映画:堤幸彦 『トリック劇場版 』 『踊る大捜査線 THE MOVIE2 』…面白いことは面白いが、脚本はメチャクチャ。 ・韓国映画 :パク・チャヌク 『復讐者に憐れみを 』 ・アメリ カ映画:ダグ・リーマン 『ボーン・アイデンティティー 』
○2003年
・ライトノベル :谷川流 『涼宮ハルヒの憂鬱 』 (2004年までに《涼宮ハルヒ 》シリーズ全4作を発表) 西尾維新 『きみとぼくの壊れた世界 』 ・エロゲ:Flying Shine・田中ロミオ 『CROSS†CHANNEL 』 Leaf 『天使のいない12月 』 S.M.L・瀬戸口廉也 『CARNIVAL』 ニトロプラス ・虚淵玄 『沙耶の唄 』 ライアーソフト ・星空めてお 『CANNONBALL ~ねこねこマシン猛レース!~』 ・ゲーム:ZUN『東方妖々夢 』 ・漫画:『デスノート 』連載開始(2006年完結) ・小説:保坂和志 『カンバセイション・ピース 』 舞城王太郎 『阿修羅ガール 』 ・ドラマ:堤幸彦 『TRICK3』 『相棒 season2』(2004年完結。以降、2009年までに全7シリーズを放送) ・映画:黒沢清 『アカルイミライ 』 ・韓国映画 :パク・チャヌク 『オールド・ボーイ 』
○2004年
・ライトノベル :鎌池和馬 『とある魔術の禁書目録 』(2011年までに第1部全25作を発表) 奈須きのこ 『空の境界 』 西尾維新 『新本格魔法少女りすか 』(2007年までに全3作を発表) ・エロゲ:key・麻枝准 『CLANNAD 』 TYPE-MOON ・奈須きのこ 『Fate/stay night 』 ライアーソフト ・星空めてお 『Forest』 ・ノベルゲーム:KID・打越鋼太郎 『Remember11 』 竜騎士07 『ひぐらしのなく頃に 暇潰し編 』 ・ゲーム:巧舟 『逆転裁判3 』 ZUN『東方永夜抄 』 ・アニメ:『ふたりはプリキュア 』 新房昭之 『魔法少女リリカルなのは 』…巧みな映像作家である新房昭之 が真面目に監督した作品。続編は監督が変わり、その点でだいぶ劣る。 真下耕一 『MADLAX 』 『舞-HiME 』(2005年完結) ・アニメ映画:押井守 『イノセンス 』 新海誠 『雲の向こう、約束の場所 』 ・漫画:荒木飛呂彦 『ジョジョの奇妙な冒険 』第7部連載開始(2011年完結) ・推理小説 :殊能将之 『キマイラの新しい城』 ・映画:是枝裕和 『誰も知らない』 ・アメリ カ映画:『バタフライ・エフェクト 』 ・イギリス映画:エドガー・ライト 『ショーン・オブ・ザ・デッド 』
○2005年
・エロゲ:あかべぇ そふとつぅ・るーすぼーい『車輪の国、向日葵の少女 』 オーバーフロー『School Days 』 戯画・丸戸史明 『パルフェ ~ショコラ second brew ~』 ザウス ・田中ロミオ 『最果てのイマ 』 TYPE-MOON ・奈須きのこ 『Fate/hollow ataraxia 』 Le.Chocolat ・瀬戸口廉也 『SWAN SONG 』 ライアーソフト ・星空めてお 『SEVEN BRIDGE』…未完というべき本作が星空めてお のライアーソフト での最後の作品になる。 ・アニメ:『ふたりはプリキュア Max Heart 』 新房昭之 『ぱにぽにだっしゅ! 』 『舞-乙HiME 』(2006年完結) ・漫画:石黒正数 『それでも町は廻っている 』連載開始(2016年完結) 木多康昭 『喧嘩商売 』連載開始(2010年完結) 『ライアーゲーム 』連載開始(2015年完結)…過度に戯画的な舞台設定と顔芸が定式化する。 久米田康治 『さよなら絶望先生 』連載開始(2012年完結) 松井優征 『魔人探偵脳噛ネウロ 』…2007年発売の第11巻の《電人HAL》編のあと、作品のアイロニー は除去され、あまつさえバトル漫画に路線変更される。そして、作者の続編はみるに耐えないものだった。資本主義のバッドトリップ。 ・推理小説 :山口雅也 『奇偶』 ・韓国映画 :パク・チャヌク 『親切なクムジャさん 』 ・アメリ カ映画:ダグ・リーマン 『Mr.&Mrs.スミス』
○2006年
・ライトノベル :西尾維新 『化物語 』 上下巻…西尾維新 は『化物語 』で2つの革命を起こした。1つは、掛合いだけでライトノベル は成立するということ、もう1つは、ラブコメ の超克。"「言っておくけれど阿良々木くん。私は、どうせ最後は二人がくっつくことが見え見えなのに、友達以上恋人未満な生温い展開をだらだらと続けて話数を稼ぐようなラブコメ は、大嫌いなのよ」"(第2話)。 野村美月 『"文学少女 "と死にたがりの道化』(2008年までに本編全7作を発表) ・エロゲ:あかべぇ そふとつぅ・るーすぼーい『車輪の国、悠久の少年少女』 戯画・丸戸史明 『この青空に約束を― 』 ・ノベルゲーム:竜騎士07 『ひぐらしのなく頃に 祭囃し編 』…酷かった。 ・アニメ:『ふたりはプリキュア Splash Star 』 西村純二 『シムーン 』 『涼宮ハルヒの憂鬱 』 …京都アニメーション の制作した『涼宮ハルヒの憂鬱 』と『らき☆すた 』、『けいおん! 』の3作は2000年代のアニメーションの代表作となった。しかし、真に実験的と言えるのは山本寛 が演出を務めた『涼宮ハルヒの憂鬱 』だけであり、『らき☆すた 』の放送中に山本寛 は退社し、『けいおん! 』第2期のときには、その熱気も失われていた。『涼宮ハルヒの憂鬱 』におけるモブ・キャラク ターの設定という挑戦的な写実性は、『けいおん! 』第2期で転倒し、ファン・コミュニティとの馴れあいに堕落する。その後、京都アニメーション はよくも悪くも牽引役の役目を降り、安定経営の中小企業になる。そして、その『けいおん! 』第2期から存在感を発揮しはじめたのが、いま、京都アニメーション で看板を担う山田尚子 だった。 ・漫画:迫稔雄 『嘘喰い 』連載開始(2018年完結) ・映画:堤幸彦 『トリック劇場版2 』 ・韓国映画 :パク・チャヌク 『サイボーグでも大丈夫』 ポン・ジュノ 『グエムル -漢江の怪物-』
○2007年
・時事:ドラマ『ハケンの品格 』が放送。2001年から2006年の長期に渡る小泉政権 のもたらした資本主義のバッドトリップの見本。当時の評論などを読みなおすと、小泉首相 の支持率の絶頂期に蓮實重彦 が警鐘を鳴らしていて、その冷静さと観察眼に敬服させられる。ちなみに、世間で喧々囂々の批判がなされている安倍首相に対しては、その支持者と批判者を諸共に、蓮實重彦 は冷笑して済ませている。おそらく、蓮實重彦 は安倍晋三 のような馬鹿より小泉純一郎 の方が、よほどナポレオン的でヒトラー 的だったと思っているのだろうが、もっともなことだ。
・エロゲ:OVERDRIVE ・瀬戸口廉也 『キラ☆キラ』 ・アニメ:『Yes!プリキュア5 』 磯光雄 『電脳コイル 』 『アイドルマスター XENOGLOSSIA 』…無印のアニメ『アイドルマスター 』はクズ。資本主義のバッドトリップ。 『School Days 』 『らき☆すた 』 ・ライトノベル :奈須きのこ 『DDD』 ・小説:伊藤計劃 『虐殺器官 』 円城塔 『Self-Reference ENGINE 』 ・映画:青山真治 『サッド ヴァケイション 』 黒沢清 『叫』 ・イギリス映画:エドガー・ライト 『ホット・ファズ 』
○2008年
・ライトノベル :伏見つかさ 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない 』…ライトノベル の1つの時代の終わり、あるいは始まり。 ・小説:伊藤計劃 『ハーモニー』 舞城王太郎 『ディスコ探偵水曜日 』 ・映画:黒沢清 『トウキョウソナタ 』 ・アメリ カ映画:クリストファー・ノーラン 『ダークナイト 』
○2009年
・ライトノベル :平坂読 『僕は友達が少ない 』(2011年までに全7作を発表) ・ノベルゲーム:5pb. ・志倉千代丸 (企画)『STEINS;GATE 』 ・アニメ:『フレッシュプリキュア! 』 『けいおん! 』 『とある科学の超電磁砲 』 ・韓国映画 :パク・チャヌク 『渇き』 ポン・ジュノ 『母なる証明 』 ・アメリ カ映画:『ゾンビランド 』
○2010年
・エロゲ:Leaf ・丸戸史明 『WHITE ALBUM2 』 (2011年に完結編を発表)…本作をもってエロゲの隆盛は幕を閉じる。 ・ノベルゲーム:TYPE-MOON ・奈須きのこ 『Fate/EXTRA 』 ・ゲーム:『ダンガンロンパ 』 ・映画:北野武 『アウトレイジ 』 ・アメリ カ映画:マシュー・ヴォーン『キック・アス 』 ・イギリス映画:エドガー・ライト 『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団 』
○2011年
・時事:東日本大震災 AKB48 『ポニーテールとシュシュ 』…AKB48 そのものの活動開始は2005年だが、本年をもって全国的に認知された。いわゆる《アイドル戦国時代》、資本主義のバッドトリップの始まり。
・アニメ:菱田正和 『プリティーリズム ・オーロラドリーム』(2012年完結) 幾原邦彦 『輪るピングドラム 』 ・ソーシャルゲーム :『アイドルマスター シンデレラガールズ 』…『シンデレラガールズ 』のシナリオはクソで、むしろそのことでユーザーが団結感を強めているくらいだが、その泥沼に蓮の花が咲いた。2016年に連載開始する廾之『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』だ。 ・漫画:荒木飛呂彦 『ジョジョリオン 』連載開始 ・ドラマ:『家政婦のミタ 』 ・アメリ カ映画:『キャビン』
○2012年
・アニメ:『アイカツ! 』(2013年完結) 菱田正和 『プリティーリズム・ディアマイフューチャー 』(2013年完結)…対象年齢を下げ、そのため方針の混乱があった。 『戦姫絶唱シンフォギア 』…続編から監督が交代し、演出は洗練されたが、作品のシリアスな雰囲気はなくなった。第1作は低予算で、拙い演出も多かったが、エモーションが最高に達した瞬間に幕を下ろす。それはフィクションの理想の1つだ。資本主義のバッドトリップ。 ・ノベルゲーム:TYPE-MOON ・奈須きのこ 『魔法使いの夜 』 ・ライトノベル :榎宮佑『ノーゲーム・ノーライフ 』 …いわゆる異世界 モノだが、ニーチェ 的、近親相姦と《ゼロ年代 》の息吹に溢れている。言うまでもなく、ウェブ小説ではない。 ・小説:伊藤計劃 ・円城塔 『屍者の帝国 』 ・韓国映画 :キム・ギドク 『嘆きのピエタ 』
○2013年
・時事:『そして父になる 』をもって是枝裕和 の監督作品へのフジテレビの協賛がはじまる。結果、是枝裕和 の監督作品からアイロニー は軽減することとなる。『万引き家族 』が反骨的だなどと、馬鹿らしい話だ。『ワンダフルライフ 』は死後、死者のもっともいい記憶を再現して写真にする物語だが、女子高校生がディズニーランドのパレードと言うと、登場人物が「うーん。いままで君くらいの女の子は4人きたけど、みんなディズニーランドのパレードって言うんだよね」と応える。反骨的すぎる。そして、このフジテレビの協賛と商業化の傾向は、他の芸術的な映画監督にも及ぶ。
・アニメ:『ドキドキ!プリキュア 』 菱田正和 『プリティーリズム・レインボーライブ 』 『ラブライブ! 』…資本主義のバッドトリップだが、気持ちのいいことが難しい。 ・ノベルゲーム:TYPE-MOON ・奈須きのこ 『Fate/EXTRA CCC 』 ・ソーシャルゲーム :『艦これ』…誰も気づかなかったが、このとき、水面下で革命が起きた。キャラク ターごとに異なるイラストレータ ーに発注し、誰もそのことを咎め なかった。作品としての一貫性、物語性の排除。 ・韓国映画 :パク・チャヌク 『イノセント・ガーデン 』 ポン・ジュノ 『スノーピア―サー』 ・イギリス映画:エドガー・ライト 『ワールズ・エンド』…エドガー・ライト のイギリス時代の終わり。同時に、彼の精神史の終わり。
○2014年
・漫画:木多康昭 『喧嘩稼業』連載開始 ・アメリ カ映画:ダグ・リーマン 『オール・ユー・ニード・イズ・キル 』
○2015年
・時事:又吉直樹 の『火花』が芥川賞 を受賞。もともと、芥川賞 はつねに採算分岐点に立つ純文学の大きな収益源で、文学性と商業性の両面の役割を担う奇妙な賞だった。そのため、はるか以前から芥川賞 の文学的な権威は野間文芸新人賞 や三島由紀夫賞 の下位に転落していた(『芥川賞 の偏差値』)。が、この年の『火花』の受賞をもって、純文学の商業主義への迎合は明確になった。
・アニメ:幾原邦彦 『ユリ熊嵐 』 『アイドルマスター シンデレラガールズ 』(第1期・第2期) ・ソーシャルゲーム :TYPE-MOON ・奈須きのこ 『Fate/Grand Order 』
○2016年
・漫画:廾之『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』 ・ドラマ:『逃げるは恥だが役に立つ 』 ・韓国映画 :キム・ギドク 『The NET 網に囚われた男 』