『White Album2』の物語の構造分析

WhiteAlbum2 『元年春之祭』の陸秋槎が『ミステリマガジン』2019年3月号の寄稿において、影響を受けた作品のなかで、『CROSS†CHANNEL』『キラ☆キラ』『White Album2』の3作を「魂の名作」と評していた。 いわゆるエロゲの成熟期における代表的なシナリ…

『ラーメン才遊記』全話レビュー

ついでなので『才遊記』の内容もまとめる。全11巻なので、この記事で内容を確認しようとしているひとがいるなら、実際に読んだほうが早いです。 ○第1巻「フムフムとワクワク」 ・第1-3杯:汐見ゆとり登場。初めてラーメンを食べたのが半年前というが、…

『ラーメン発見伝』全話レビュー

個人的なメモを兼ねて。全話ネタバレ。 ○第1巻「繁盛店のしくみ」 記念すべき第1巻だが、第1-3話があまり面白くない。 ・第1杯「ラーメン、会社員、現る!!」 記念すべき第1話なのにあまり面白くない… のだが、この第1話で転任した前課長の挿話が最終…

2019年度私的百合マンガ大賞(付・百合小説大賞)

昨年、百合マンガの年間ベスト( 2018年度私的百合マンガ大賞(付・百合小説大賞) - 白樺日誌 )を自選してみた。先日、見返したところなかなかいい趣味だった。ややサブカル寄りな気もしたが、ある視点からした2018年の年間傑作選としてはかなり参考に…

『金田一少年の事件簿』全作レビュー

なぜいま『金田一少年の事件簿』なのかというと、アンソニー・ホロヴィッツの『カササギ殺人事件』を読んだからだ。ミステリのすばらしさを称揚する本作で、古色蒼然たるミステリのすばらしさを思いださされた。そう。私たちはクローズド・サークル、連続殺…

なぜ『ALTER EGO』はヒットしたか 文学的読解

筆者の診断記録 アプリゲーム『ALTER EGO』をクリアした。 ノンプロモーションでありながら約1週間で10万インストールという異例のヒット作だ。私自身、名作だと感じた。 ゲームシステムは単純で、1.『クッキークリッカー』 2.性格診断 3.恋愛シミュレーショ…

『無間氷焔世紀 ゲッテルデメルング』感想

・異性愛「反生殖主義に勝ったッ! 第2部2章完!」 『FGO』第2部2章『無間氷焔世紀 ゲッテルデメルング』を攻略しました。以下、その感想です。 ・まさかのメインシナリオでの奈須きのこの続投。というわけで大満足でした(ここで順接は失礼かもしれません…

『俺ガイル』、『私モテ』、青春群像劇 - アンチテーゼとしての西尾維新 -

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』9巻までを読んだ。最新刊は12巻で、他に短編集が2巻あるのだが、ここで一区切りのようなので止める。せっかくなので感想を書く。 ○1巻 基本ギャグで最後に「ちょっといい話」がくるという、ごく普通のライ…

異聞帯とは何か - ホームズ、クトゥルフ、天才と凡人 -

『FGO』第1部はマシュの短命さがわかったところで主題がはっきりしたと思う。つまり、人間が愚行の歴史を歩み、生きる意味とは何かということだ。有体にいえば実存主義だ。その点、その主題は終章に先立ち、第6章で決着している。 さて、第2部も第1章でおお…

劇場版『名探偵コナン』全21作レビュー

いまさら劇場版『名探偵コナン』をみようと思う人間に、どの作品が好適か教えることなどできないし、そもそも自分は他人に合わせるのが苦手だ。だから、このブログ記事では未視聴者に配慮して物語の核心を伏せることなどはしないが、要約したプロットを併記…

『放浪息子』と『家の馬鹿息子』 - 志村貴子論 -

(戦争体験者のサルトルの村焼き。本論とは関係ない) 『放浪息子』は名実ともに志村貴子の代表作だろう。『放浪息子』は〈放蕩息子〉の言葉遊びだが、文学史上、もっとも名高い〈放蕩息子〉はサルトルの『家の馬鹿息子――1821年から1857年にかけてのギュスタ…

2018年度私的百合マンガ大賞(付・百合小説大賞)

わたしも百合厨であるからには、毎年、年末は『この百合マンガがすごい!』を読んでいるが、たまには自分で選んでみようと思った。それだけでは芸がないので、本年度の百合小説の順位も考えてみた。 ・マンガ部門 1.模造クリスタル『スペクトラルウィザー…

白鷺千聖と丸山彩の関係性についての統一的見解

白鷺千聖の人物像を考察し、もって、丸山彩、その他、瀬田薫および松原花音との関係性を考察する。 白鷺千聖の人物像を考えるとき、《優しく人当りのいい白鷺千聖》と《計算高く合理主義者の白鷺千聖》の、一見して相反する二面で把握するのが一般的だと考え…